大学生の県内就職率アップを目指し小冊子を配布
「いしかわ学生定着推進協議会」が作成
金沢大学と金沢工業大学、北陸大学など石川県内の8大学と各自治体、企業などで作る「いしかわ学生定着推進協議会」が、石川県と縁のある著名人に「今の仕事を選んだ理由」や「仕事への情熱」などを聞き、冊子にまとめ、今春、各大学の1年生5500人に配った。学生たちに多様な生き方や働き方を紹介することで、県内への就職率アップにつなげようとの試みだ。(日下一彦)
「生き方」「働き方」の参考に/県ゆかりの著名人が“エール”
冊子の名前は「emotion」、「熱い想(おも)い」の意味で、サブタイトルが「ジブンで探す『志』&『マイ・ワーク・スタイル』発見ノート」となっている。A4サイズで全31ページのビジュアルな構成で、四つの分野に著名人が2人ずつ登場し、「いかにして自分の道を選択し現在に至ったか」「自分を突き動かしてきたemotionとは何か」などを語っている。学生たちがこの冊子をきっかけに、自らのemotionを明確にして、それぞれの「生き方」「働き方」の参考にしてほしいと企画された。
掲載されているのは、いずれも県内出身者、ないしは県内の大学を卒業した県ゆかりの8人だ。まず時代をリードするトレンドリーダーとして、音楽プロデューサーの中田ヤスタカさんと芥川賞作家の本谷有希子さん、続いてグローバルビジネススタイルでは、ヤマトホールディングスの山内雅喜社長とファミリーマートの澤田貴司社長。
さらに、起業・ベンチャースタイルではゴーゴーカレーグループの宮森宏和代表とマゼラン・リゾート・&・トラスト社長の朽木浩志さん、そして「地域LOVE・地域密着」スタイルでは、珠洲焼陶芸家の渡邊キャロラインさんと社会福祉法人佛子園理事長の雄谷良成さんで、それぞれ原稿用紙8枚程度にまとめられている。
金沢市出身の中田さんは、中学生の頃から音楽家としての自分を思い描き、そこに到達するまでの線をイメージし続けたという。同郷の歌手・こしじまとしこと音楽ユニット・CAPSULE(カプセル)として音楽活動を始め、映画音楽やリオ五輪閉会式の楽曲、北陸新幹線金沢駅の発車予告音の提供など、幅広い活動を続けている。「一直線で行ける人などいない。しかし、未来の自分に線を引き続ければ、ジグザグでもきっとたどり着ける」とエールを送っている。
劇作家でもある本谷さんは、自身の名前を冠した劇団を旗揚げし、持ち前の積極性で幾多の挫折を乗り越え、活動を続けている。「酷評とかバッシングは、何かを始めたばかりの人に対する洗礼、通過儀礼のようなもの。それを乗り越えられる者しか、世の中に通用しないんじゃないかな」と厳しい。
父が転勤族だった山内さんは、「転校生だからこそ得られるものがあり、“人との出会い”が自分を成長させてくれた」と振り返り、そこから「新しい世界が見えてくる」と貴重な体験を語っている。
宮森さんは、同郷のプロ野球選手だった松井秀喜さんと同世代で、その活躍に刺激されて起業した。「ひとかたならぬ苦労も体験したが、目標に向かって絶対にあきらめなかった。パーフェクト・ポジティブであることが成功の鍵となった」と述べている。
冊子では著名人たちのメッセージをただ並べるだけでなく、それを読んで心に響いたフレーズや参考になったことを書き留める「emotionノート」があり、最終の「まとめノート」では、学生自身のemotionを明確化させ、そのために今何をしなければならないかを記入するように導いている。かなり考えられた構成だ。
冊子を企画・発行したのは「いしかわ学生定着推進協議会」で、金沢大学と金沢工業大学、石川県立看護大学、石川県立大学、金沢星稜大学、北陸大学、金沢学院大学、金城大学の8大学、それに石川県、金沢市、小松市など20の全自治体、そして企業が協定締結し、平成28年1月にスタートした。
これは前年の9月に文部科学省で採択された「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+事業)」の一環で行われている。また冊子の発行は、学生の県内就職率を平成26年度の36・5%から平成31年度までに46・5%にまで引き上げることを目指している。







