特別活動における学校飼育動物の取り組み
帝京大学教育学部初等教育学科教授 若林彰氏
モルモットの飼育を通じた特別活動に尽力してきた帝京大学教育学部初等教育学科の若林彰教授が「特別活動において学校飼育動物の取組を通して育てる力」と題して、東京都文京区の東京大学弥生講堂で行われた全国学校飼育動物研究大会で講演した。
生き物を世話することで児童に芽生える生命の尊重や責任感
特別活動を指導する上で重要なことについて若林氏は「人間関係の形成」友達集団の中で、いったい何を、どのような話をしたか、社会性の身に付け方、「社会参画」子供たちのレベルでの社会参加、「自己実現」自分の思っていることを発表するなどを含め自分のやりたいことを実現する――の三つを挙げている。
特別活動が道徳と決定的に違うのは、実践活動が重視されること。例えば、運動会の「ムカデ競争」で、練習中いつも負けていたA組が本番でやっとB組に勝って、抱き合い、うれし涙を流す。負けたB組は悔し涙を流す。そんな中で仲間っていいよな、友達っていいよな、と体感する。
そういった集団の実践の中で学び、育んでいくことを特別活動は目指している。動物飼育についても、実践ありきで「動物を触った、温かみ」「ふわふわして気持ちいい」などの触れ合いを感じることが特別活動の学びの要点だ。
若林氏は①学校生活での基礎となる力を育成することはもちろんだが、社会人、大人になってからも生きていく力を育てる②協働性や異質なものを認め合う土壌を育むこと③学力の向上に寄与すること④学級文化・学校文化の醸成へとつながり、わが国の教育課程の特徴として海外から高い評価を受けていること――の4点に期待している。
学校飼育動物との関わりから育みたい資質能力として「生命尊重」「優しさ」「協力」「思いやり」「責任感」「観察力」「自信」などが挙げられる。生き物を世話するためには、責任を持った活動が必要になり、児童の間に生命尊重や責任が芽生える。上級生が下級生に対して、飼育の方法、扱い方、飼育箱の掃除、観察の視点など伝えていく中で動物に対してだけでなく、下級生に対しての思いやり、優しさ、責任感などが育っていく。
日ごろの観察によって、発見した動物の習性や特徴、各個体の性格などを見る目、観察力、集中力などが育ち、他の教科への好影響が見られる児童もいる。また、不登校だった児童が生き物の世話をすることになり、授業前に世話ができなかったら、昼の休憩時間や授業の合間の時間を使って世話をするなど、責任感が育つとともに不登校が解消されたケースなど若林氏が紹介した。
「児童が主体的に進める実践を通じて誇りを持ち、動物を大切にする気持ちを深め、充実した活動へと特別活動が深まることを見て、特別活動における学校飼育動物の取り組みは極めて深い」と若林氏は語る。






