食で変わる子供の心と体、実践例を紹介
食育コーディネーター・国光美佳さんが講演
学校給食を和食に変えたところ、生徒の問題行動の改善や学力テストの成績が上がったとの報告があり、和食が見直されているが、「子どもの心と健康を守る会」代表の国光美佳さんは、特にミネラル補給によって「子供の心と体は改善する」と訴え、講演活動などを行っている。東京都内で行われた講演会(主催・サイエントロジー東京)から、国光さんの実践例などを紹介する。(森田清策)
ミネラル不足の「現代食」、問題行動改善で学習面に好影響
アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害については、文部科学省は小中学校の児童・生徒の6・5%がその可能性があるとしている。しかし、普通の子供と違った行動を取る、読む・書く・計算などに困難があるからと言って、発達障害という病名を付けることには、小児科医など専門家の間からも“疑問の声”がある。脳機能の先天性の障害とされ、副作用のリスクのある薬の投与につながるからだ。
食育コーディネーターでもある国光さんが問題行動や学習能力の改善で、着目するのは食事で補給するミネラル。神経伝達物質やホルモンなどを作る酵素を働かせる「肝心要の栄養素」で、薬学博士の桜井弘さんの言葉を借りると、「オーケストラの指揮者」「野球やサッカーの監督」の役割に似ている(著書『金属は人体になぜ必要か』)。
今月11日、東京・新宿で行った講演「食で変わる心と体」で、国光さんは「ちょっとした食の工夫で、イライラしていた子供が落ち着いてきた、すぐキレていた子供がキレなくなった。そんな話はたくさんあります」と語った。なぜ、そんなことが起きるのか。
主要ミネラルにはカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅がある。これらが不足すると、神経過敏、腸内神経の異常(カルシウム不足)、うつ病、神経・精神障害(マグネシウム不足)、頭痛、動悸(どうき)(鉄不足)、味覚障害、免疫力の低下(亜鉛不足)、貧血、成長障害(銅不足)などの症状が見られるようになる。食事を変えることが問題行動の改善や学力向上につながることに対しては、その根拠が薄いとの指摘もあるが、主要ミネラルが前出の症状と関連していることは認められている。
NPO法人「食品と暮らしの安全基金」の調査では、コンビニ弁当などの「現代食」は便利な半面、このミネラルが不足していることが分かった。例えば、コンビニ弁当のほとんどは、主要ミネラルのいずれも厚生労働省が定める推定平均必要量を満たしていない。冷凍食品、レトルトカレーなども同じだという。
その理由について、国光さんは大きく四つに分けて説明した。①水煮食品と精製食品の増加②リン酸塩(食品添加物)を使う食品の増加③インジェクション処理④化学調味料が使われている――だ。
「水煮食品は、1回ゆでた後、何回も水洗いするので、素材の栄養素がどんどん流れて落ちる」。リン酸塩はミネラルと化合して体外に排出する。インジェクション処理とは、肉を増量したり食感を柔らかくするため、無数の針を刺して、リン酸塩入りの調味料を注入すること。この処理が行われると、素材の栄養素が抜けるとともに、リン酸塩も注入される。天然だしはミネラルが豊富だが、化学調味料ではミネラルが摂取できない。
これらのことを踏まえると、家庭でできる対処方法としては和食中心の食生活に変えることが重要だが、急には難しい。そこで国光さんは第1ステップとして、①白米から玄米・分つき米・雑穀米に②煮干し、あご、昆布など天然だしを使う③非精製のエキストラバージンオリーブオイル、ごま油、えごま油――などを補充することを勧める。
講演会では、ミネラル補給による心や体の改善例の報告があった。朝食にスナック菓子、夕食にはラーメンを食べ、パニックや集団への不適応などからアスペルガー症候群と診断された小学2年男児は、食事改善前はナイフで自分を刺す絵を描いていた。それが食事改善1年後は、自分を王様に見立て、「しあわせ!」とコメントを書き加えるまでになり、統合失調症の薬の処方も終了した。
また、学習面では相談に乗ってあげた子供や保護者から「成績が上がった!」「集中力が続くようになった」「落ち着いて受験でき合格!」といった声が国光さんの元に届いているという。
講演会に参加した女性(40代)は「きょう、教えていただいたことを“発達障害”と言われた子供を持つ友人に教えてあげたい。私自身も、食にもっと気を付けたい」と語った。