子供の悩み受け止める態勢つくる 北海道人格教育協議会

「いじめ」テーマにフォーラム

 いじめが陰湿化する傾向にあり、文部科学省は「いじめ」の定義の変更やスクール・カウンセラー配置の充実化などの、政策を打ち出している。そんな中、いじめ問題の解決法について民間の教育団体がこのほど、札幌市内でフォーラムを開催し、その背景と対応などについて論議した。(札幌支局・湯朝 肇)

「聞いてあげる人の育成大事」/「家族が最後のよりどころ」

子供の悩み受け止める態勢つくる

グループに分かれ自由に議論を行った参加者たち

 「以前に総務省が小学生と中学生を対象にいじめに対してアンケートを取ったところ、小学生の方が積極的にいじめに対応する姿勢がみえました」

 2月20日、札幌市内で開かれた北海道人格教育協議会(会長、山谷敬三郎・北翔大学教授)の教育フォーラムで北海道教育大学大学院の佐藤由佳利教授(学校臨床心理学専攻)はこう語って、小学校から中学校に移行していく中でいじめへの対応に変化があることを指摘した。

 アンケートで、「いじめられている人を助けたり励ましたりしたことがある」と答えた割合は、小学生36・5%だったのに対し、中学生は25・0%だった。また、「いじめている人を注意した」は、小学生が37・1%に対し、中学生は17・5%。「先生に話した」は小学生が25・9%、中学生は13・9%だった。圧倒的に小学生が積極的にいじめ問題の解決に対応していることが分かる。

 逆に、「いじめを見ても何もしなかった」と答えた中学生は52・4%だったのに対し、小学生は28・1%と、中学生の無関心ぶりを示す結果が出た。

 こうした傾向に対して佐藤教授は、「小学生が純粋な心でいじめ問題に対応しようと行動するのに対し、中学生になると自我が芽生えて“自分を守る”態勢に入る。『目立ちたくない』『いじめられている子を助けると、自分も巻き込まれる』といった思いが働き、面倒になることを避ける方向に向かうのだと思う」と説明する。

 さらに、佐藤教授は、この日のフォーラムの参加者にいくつかの質問を行った。「1、いじめられたことがあるか」「2、それはどの程度の苦痛の体験か」「3、いじめたことがあるか」「4、それは相手にとってどの程度の苦痛のものか」の4項目。

 2と4の項目では体験の苦痛度を数値で表してもらい、さらに「2と4ではどちらの数値が大きいか」「1と2ではどちらが答えやすかったか」を聞いた。

 その結果を総括して佐藤教授は「総じていじめたことよりも、いじめられた記憶が大きく残るもの。また、自分にとって何でもないことが相手は『いじめられた』と認識することも多い」と語る。

 文科省は平成25年にいじめ対策推進法を施行した。同法ではいじめを「一定の人的関係にある他の子による心理的または物理的な影響を与える行為で、対象になった子が心身の苦痛を感じているもの」と新たに定義した。その上で、学校での対応策として、①早期発見の措置②相談体制の整備③道徳教育の充実などを挙げている。

 こうした対応策の推進とともに、佐藤教授は「心に悩みのある子は、その苦しみを聞いてほしいと切実に思っている。家族や友人、学校の先生など、そうした子供を受け入れる態勢をつくることがとても大事」と話し、受け入れる側として「聞く力」を養うことの重要性を訴える。

 この日は、佐藤教授の講演のあと、参加者同士がいくつかのグループをつくって「いじめ」をテーマに自由な形で意見交換した。参加者からは、「いじめは学校に限らず、地域や職場でもある。きっとなくなることはないだろう。それでも苦しんでいる時には、聞いてくれる人がいればそれだけでありがたいもの。聞いてあげることのできる人間を育てていくことが大事」といった意見や、「子供にとって家族が最後のよりどころ。家族の大切さを改めて感じた」との意見が出た。

 北海道人格教育協議会は大学教授や小中学校、高校の教師などの教育関係者や教育に関心のある市民が参加できる民間団体で、定期的にフォーラムやセミナーを開催している。今後については「フォーラムやセミナーで話された内容をまとめ、一つの提言として関係機関に提出したい」(同事務局)としている。