豪注目の海自潜水艦
日本政府は5月18日、次期潜水艦の国際共同開発を目指すオーストラリア政府からの要請を受け、海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦に関する技術情報をオーストラリアに提供することを決定した。
日本はオーストラリアとの共同開発・生産の実現に向けた可能性を検討するため、主要寸法や性能情報を限定して開示する。
中谷元防衛大臣は同日の記者会見で「オーストラリアは安全保障面で共通の価値と利益を共有する日本にとっての戦略的パートナーだ」と述べ、両国の防衛協力の重要性と情報開示決定の意義を強調した。
オーストラリア海軍では、主力の「コリンズ」級潜水艦が更新の時期を迎えており、海自の「そうりゅう」型潜水艦の技術に注目していた。
「そうりゅう」型潜水艦の最新技術は以下の通りだ。
①「AIP(非大気依存推進)機関」と呼ばれるエンジン機関が搭載されている。通常動力型(非原子力)の潜水艦では、エンジンや艦内の環境保持のために、外部から大気を取り入れる必要があり、水中での潜航時間が短いという弱点があった。
それに対し「そうりゅう」型潜水艦は、必要な大気の量を極力少なくする方式を採用しているため、従来は数日程度が水中潜航の限界だったものが、約2週間にまで延ばすことが可能となった。
②船体に音波吸収素材と反射体が装着されており、世界トップレベルの静粛性を実現している。
③攻撃面では、高度に電子化された艦内ネットワークである「自律分散処理型戦闘システム」が採用され、効率的な攻撃が可能となった。
このほかにも新しい技術が採用されているが、各国の海軍が運用する通常動力型の潜水艦の中で、「そうりゅう」型潜水艦は、世界トップクラスの性能を誇る潜水艦なのである。
オーストラリアが「そうりゅう」型潜水艦に注目するのは当然であり、日本が潜水艦技術をオーストラリアに提供することは、中国を牽制するうえでも、有効な手段になるに違いない。
(濱口和久)