露によるウクライナ領土侵害を許すな


 ウクライナ東部のドネツク、ハリコフ、ルガンスクの3州で親ロシア派デモ隊が州政府庁舎などに立てこもり、ドネツク、ハリコフ両州では「共和国」樹立を一方的に宣言した。

 3州はロシア系住民が多く、国境付近に展開している数万人のロシア軍が介入する可能性もある。しかし、ウクライナの主権と領土を侵害することは許されない。

 デモ隊が行政庁舎占拠

 ロシアはウクライナ南部のクリミア半島を一方的に編入したものの、反発するウクライナ暫定政権は親欧州連合(EU)路線を加速。このままでは北大西洋条約機構(NATO)のさらなる東方拡大につながりかねず、ロシアはウクライナでの影響圏確保のため、東部のロシア系住民に高度な自治を認める連邦制導入を提案している。

 ロシアが支援しているとされるデモ隊が行政庁舎を占拠し、ロシア国旗を掲げた光景は、ロシア武装部隊「自警団」が掌握する前のクリミアと重なる。クリミア掌握・編入のシナリオをちらつかせ、ウクライナ暫定政権や欧米に連邦制導入を認めさせる狙いだろう。

 ウクライナのアワコフ内相はデモ隊の強制排除も辞さない構えだ。ただ治安部隊突入でロシア系住民に人的被害が出れば、ロシア軍が介入に乗り出す恐れがある。

 だが連邦制を導入するか否かを含め、ウクライナの将来はウクライナ国民が決めることだ。力を背景にウクライナの内政に干渉するかのような態度は許されない。ウクライナでは5月に大統領選が予定されている。日米など先進7カ国(G7)をはじめとする国際社会は、ロシアにウクライナの主権と領土の一体性を尊重するよう強く求めるべきだ。

 ロシアによるクリミア編入を受け、G7が先月採択したハーグ宣言では、6月にソチで予定されているG8首脳会議への参加を取りやめ、同時にロシアのG8参加を停止することを決めた。また「分野別の制裁を含む行動を強化する用意がある」と警告。ロシアがウクライナ東部に介入すれば、金融やエネルギー、防衛産業などの重要分野を狙った制裁を発動する構えを示している。

 ただ、ロシアと密接な経済関係を持つ欧州連合(EU)内には、大規模な制裁をためらう声も根強い。2006年と09年にはロシアからのウクライナ経由のガス輸送がストップし、欧州諸国で工場の操業が停止になるなどの混乱が生じた。フランスのファビウス外相はハーグ宣言を受け「制裁とその反動を議論するなら、エネルギー問題が問われねばならない」と語った。

 米国とEUは今月初めの会合で「米国による将来のシェールガスの輸出が欧州や戦略的友好国に恩恵をもたらす」との声明文を採択した。EU加盟国の間では、シェール革命に沸く米国のエネルギーの対欧州輸出への期待は高い。

 EUはエネ依存度低下を

 5月初旬には、G7エネルギー相会議がローマで開催される。EUのロシアへのエネルギー依存度を低下させる政策の実行を急がねばならない。

(4月11日付社説)