STAP問題、検証に証拠提示など努力を
新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題で、理化学研究所に不服を申し立てた小保方晴子研究ユニットリーダーが問題発覚後初の記者会見を行った。
会見で小保方氏は「STAP細胞はある」と明言し、英科学誌ネイチャーに発表した論文の画像も不注意による取り違えであり、捏造(ねつぞう)には当たらないと改めて主張。論文撤回は「結論が完全な間違いであったと国際的に発表することになる」として行わない考えを表明した。
存在への疑念払拭できず
約2時間半におよぶ会見の中で、小保方氏は「STAP細胞の作製に200回以上成功している」と語った。しかし、国内外でネイチャーの論文を基に作製に成功したという報告はない。これに対し、小保方氏は「私自身はたくさんのコツやレシピのようなものを持っている。新たな研究論文として発表できたらと考えている」と語った。
STAP細胞が存在するか否かは、理研の調査では問題とされなかった。しかし、重要な画像が捏造とされれば、STAP細胞そのものが存在しないのではないかとの印象を与える。「論文の根幹となる画像を取り違えることは考えられない」(理研)と考えるのが普通だろう。会見での記者たちの質問が、その点に集中するのは当然だ。
小保方氏の会見は、そういった疑念を払拭(ふっしょく)するものではなかった。STAP細胞の存在については、理研が1年ほどかけて検証することになる。時間がかかるのはやむを得ないが、できるだけ早く検証結果を出してほしい。
小保方氏は第三者による再現実験の成功例はあるとしたものの、実験者の個人名を明らかにはしなかった。さまざまな事情、利害はあったとしても、公開実験を含め、小保方氏は疑惑を払拭するために最大限の努力・協力をすべきである。それが自身の名誉のためになるはずだ。
理研と小保方氏が争う形となっているが、双方とも、問題を組織防衛あるいは自己防衛といった方向に矮小(わいしょう)化させないで、真相の解明と、科学の発展に資する方向で科学者としての責任を果たしてほしい。
理研の調査に対しても小保方氏は、十分な弁明の機会が与えられなかったとして不満を表明した。調査に与えられた期間は150日間であったにもかかわらず、48日間で最終報告が出されたことの背景に「特定国立研究開発法人」(仮称)の創設問題があったのではとの憶測を呼ぶのも無理からぬところがある。
理研は今後、再調査するかどうかを検討するが、小保方氏は他にもあるという実験ノートなど新たな資料を提示すべきである。
小保方氏に「悪意」はなかったとしても、科学者としては明らかにルール違反を犯した。2006年には東京大学のリボ核酸(RNA)研究で、実験の生データやノートを残していなかった問題が起きた。倫理の緩みが底流にあるとすれば深刻だ。
再発防止を徹底せよ
日本の先端科学研究を推進する組織で、このような事態が生じたことを厳しく受け止め、再発防止を徹底すべきである。
(4月12日付社説)