エネルギー計画、原発再稼働に向け啓蒙を


 政府は新たなエネルギー基本計画を閣議決定し、その中で原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原子力規制委員会の審査で安全性が確認されれば、再稼働させることを明記した。

 エネルギー政策は最も重要な国策の一つであり、計画を着実に進めるため、安倍晋三首相の強い指導力を期待したい。

「原発回帰」を明確化

 新エネルギー計画は事故前に3割だった原発依存度について、再生エネルギーの導入などで「可能な限り低減する」と明記。具体的な水準は今後、見極めるとしている。また、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策を引き続き推進する方針を掲げ、長期停止が続く高速増殖炉「もんじゅ」も当面存続するとした。

 与党内の協議で、将来的な脱原発を公約に掲げる公明党が明確な数値目標を盛り込むよう主張した再生可能エネルギーについては、これまでの目標を「さらに上回る水準の導入を目指す」とした。政府が特定のエネルギーについて目標を掲げるのに慎重だったことから、明確な比率は盛り込まれなかった。

 同計画はエネルギー政策基本法に基づいて3年ごとに策定される。福島原発事故を受け、当時の民主党政権は脱原発を掲げた。その転換である。新エネルギー計画は、原発再稼働に前向きな安倍政権の姿勢を反映し、原発を引き続き活用する方向に回帰した。

 ただし現在、原発事故の影響で国内48基の原発は全て停止し、今後規制委の安全審査に合格しなければ再稼働はできない。現時点では、どの程度の原発が動き出すのかは不透明で、エネルギー全体の構成も見通しにくい。

 また合格しても原発立地地域の住民の賛意が必要であり、再稼働へのハードルは低くないと見るべきだ。今、政府のやるべきことの一つは、原発事故以来の国民の原発不信を取り除くための啓蒙(けいもう)だろう。

 日本では昭和30年代に原発が導入された。その後目覚ましい経済発展を遂げ、昭和40年ごろからは環境保護のため、原発が注目されるようになった。一方、日本の原子力政策は被爆国として原子力の平和利用にいかに専心するかという課題を常に抱え、核燃料サイクル政策の決定は決して容易ではなかった。

 こうした中、政府は原子力の必要性を訴え国の進むべき道を示し、片や産業界は経済発展に尽くし、大学や研究機関が原子力の基礎技術の研究に励んだ。産官学が一致して、原子力政策のあるべき姿の追求と、国民への訴え掛けを行ってきたのである。ところがそれに比べて今日、21世紀のエネルギー事情を見通し原子力文明はかくあるべしと語る指導者、政治家があまりに少ない。

化石燃料依存は限界

 化石燃料に依存した文明は曲がり角に来ている。もっとも、天候に左右される再生エネルギーでは、今日の高度産業社会を支えるには限界がある。

 原発の安全性の強化を図りながら、今回の計画に基づくエネルギー政策を粛々と推進してほしい。

(4月13日付社説)