ウクライナ緊張、ロシアに自制を要求する
親露派のヤヌコビッチ政権が崩壊したウクライナで、クリミア半島に駐留するロシア軍部隊が、親露派のクリミア自治共和国政府と共に同地を事実上掌握。ウクライナはロシアの侵略行為を非難し、国際社会に支援を要請した。ロシアは直ちに軍部隊の活動を停止し撤退すべきである。
クリミアを事実上掌握
ロシアのプーチン大統領はウクライナへの軍事介入を上院に提案し、上院は全会一致で承認した。
大統領は声明で「ウクライナの非常事態とロシア系住民の生命の脅威に関連し、事態が正常化するまで、ウクライナでロシア軍兵力を使うことを上院に提案した」と表明している。
ロシア系住民の多いクリミア自治共和国では先月27日、最高評議会と内閣府を武装した勢力が占拠した。
同日開かれた最高評議会で、自治共和国のモギレフ首相が解任され、新首相にロシア統一党のアクショノフ代表が賛成多数で選出された。
親露派のアクショノフ首相は、自治共和国内の全軍と治安部隊を指揮下に置くと宣言するとともに、プーチン大統領に治安回復に向けた支援を要請した。クリミア半島セバストポリにあるウクライナ海軍総司令部では、ベレゾフスキー総司令官がクリミア自治共和国に忠誠を誓うなど、ロシア系の軍人・兵士や治安部隊が自治共和国側に寝返りつつある。
プーチン大統領は軍事介入の指示を現時点では出していないというが、クリミア半島の主要拠点は、ロシアが租借するセバストポリ基地のロシア軍部隊とみられる武装集団が事実上管理下に置いた。
これに対し、ウクライナ国家安全保障・国防会議を率いるパルビイ書記は「ウクライナの平和と領土の統一を守るため」に、ウクライナ軍に予備役全員を招集すると発表した。緊張は極めて高まっている。
国連安全保障理事会の緊急会合では、ウクライナのセルゲイエフ国連大使が「ロシアの侵略行為」を非難し、国際社会に対して「軍事介入を防ぐために直ちに行動してほしい」と訴えた。欧米もロシアの行動に深い懸念を示し、米国は「ロシアはウクライナへの介入を終える時だ」と強調した。
ロシアはクリミアでの軍の行動について「自国民保護のため」としているが、ロシア軍基地のあるクリミアを掌握し、ウクライナの親欧米派暫定政権に圧力を加え、将来的にクリミアの分割併合も視野に入れている、との見方も強い。
これまでロシアは、ウクライナ製品の禁輸措置や天然ガス輸出停止などで、ウクライナを自らの影響圏に引きとめようとしてきた。これらの圧力によりヤヌコビッチ政権の欧州連合(EU)加盟方針を断念させたが、親欧米派の反発で同政権が崩壊したことを受け、クリミアに軍部隊を展開するという行為に出たのだ。
軍撤収で安定に寄与せよ
ウクライナの進む道は、ウクライナ国民が決める。ロシアは直ちに軍を撤収し、同国の安定に寄与すべきである。
(3月4日付社説)