水観測衛星の世界の水害対策貢献に期待
大雨や大雪の防災に役立つ降水観測衛星がH2Aロケット23号機で打ち上げられた。日米欧が運用中の衛星十数基の観測データと合わせ、地球全体の雨や雪の状況が約3時間で分かるという。
天気予報の精度向上や台風、豪雨、干ばつなどの防災、さらに温暖化による気候変動の解明への貢献を期待したい。
気候変動の影響解明も
降水観測衛星は「全球降水観測(GPM)計画」の主衛星。GPM計画は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米航空宇宙局(NASA)が進める国際共同ミッションだ。
主衛星と十数基の副衛星群により、地球全体の降水を一日に数回観測する。主衛星は副衛星群による降水観測の基準となり、精度を高める中心的な役割を担う。
主衛星は日米が共同で開発。JAXAが情報通信研究機構と開発した「二周波降水レーダー」や、米企業による「マイクロ波放射計」などの機器を搭載している。
二周波降水レーダーは、従来の衛星では観測できなかった弱い雨から豪雨までを観測するとともに、雨滴や雪、氷粒子の大きさやそれらが雲の中でどのように分布しているのかなど詳細な情報を得ることができる。マイクロ波放射計は、13の異なる周波数で雨や雪から放射される電磁波を捉え、降水の分布などを幅広く観測する。
GPM計画で取得されるデータは、世界中の利用者に提供される。台風の目の位置の推定や天気予報の精度向上、また、降水メカニズムや気候変動が降水に与える影響の解明などに大いに期待したい。
特に、毎年台風や豪雨に見舞われる日本をはじめ、雨量計など地上の観測機器の整備が進んでいないアジアの地域で、こうしたデータが生かされれば防災に役立つ。
GPM計画は、日米が1997年から運用する熱帯降雨観測衛星が基礎になっている。また、副衛星群の一つにJAXAが2012年5月に打ち上げた水循環変動観測衛星「しずく」がある。日本の地道な貢献が光っている。
H2Aロケットは、唯一失敗した6回目以降、17回連続で打ち上げに成功。95・7%の成功率で、信頼性は世界トップクラスだ。今回は信州大や香川大など日本の7大学の超小型衛星も搭載した。
07年打ち上げの13号機から業務が移管された三菱重工業は、部品点数や作業工程の削減などコスト低減に努め、09年1月に海外の衛星として初めて、韓国のアリラン3号の打ち上げを受注。12年5月の21号機は初の商業打ち上げとなった。昨年9月にはカナダのテレサット社の通信放送衛星についても受注している。
打ち上げ需要への備えを
内閣府の宇宙政策委員会は昨年5月、将来の有人輸送をも見据えた新型基幹ロケットの開発を承認。14年度予算に開発経費として70億円が計上された。昨年9月に打ち上げに成功したイプシロンと併せ、ロケットの多様化を図り、世界の打ち上げ需要に備えたい。
(3月3日付社説)