エネルギー計画で原発活用の方針は妥当だ
政府は国の中長期的なエネルギー政策の方向性を定める「エネルギー基本計画」の案を取りまとめた。原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原子力規制委員会の安全審査に合格した場合は再稼働する方針を改めて示した。電力の安定供給のため、この方針は妥当だと言える。
電気料金再値上げの懸念
今回の案では原発について、昨年末の原案の「基盤となる重要なベース電源」という表現を「重要なベースロード電源」と変更した。原発活用に対する与党内や国民の慎重論に配慮し、「基盤となる」という文言が削られた。
「ベースロード電源」とは「ベース電源」と同様、常時一定の量を発電する基礎的な電源を意味する。表現の微修正があったとはいえ、電力を安定的に供給する上で、政府が原発を重要な存在だと考えていることに変わりはない。
現在、国内の原発48基が全て停止しているため、電力会社は火力発電用の燃料費増大で収益が悪化している。北海道電力は2013年9月に続く電気料金の再値上げの検討に入った。他の電力会社にも再値上げの動きが広がれば、4月の消費税率引き上げとともに家計の負担を増し、景気回復を妨げかねない。こうした中、政府が原発再稼働の方針を明確に掲げたのは当然だと言えよう。
原発への依存度に関しては「再生可能エネルギーの導入や火力発電の効率化などにより、可能な限り低減させる」と明記。「安全確保のために必要な技術・人材確保の観点から、(原発を)確保していく規模を見極める」とした。
福島第1原発事故の前、総発電量に占める原発の割合は約3割だった。事故を受け、依存度を下げることはやむを得ない面があろう。
だが、再生可能エネルギーは発電コストが高く、安定性にも課題を抱えている。今回提示が見送られたエネルギーのベストミックス(最適な電源構成)については、現実的な判断に基づいて示すことが求められる。
気になるのは、原発から出る使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策について「推進するとともに、中長期的な対応の柔軟性を保持」として、継続するものの将来的な見直しに含みを残したことだ。中核施設の高速増殖炉「もんじゅ」についても、長期間停止している現状への批判を念頭に「あらゆる面で徹底的な改革を行う」とし、従来の計画で掲げていた実用化の目標は明示しなかった。
しかし、核燃料サイクルは資源の乏しい日本にとって、エネルギー安全保障の観点からも重要な政策である。着実に進める必要がある。
与党は現実踏まえよ
福島の事故以来、国民の間で原発への不安が高まっているのは事実だろう。しかし、再稼働される原発は規制委の厳しい安全審査に合格したものだけだ。政府はこうした点を丁寧に説明しなければならない。政府は与党内での調整を経て3月中に計画案を閣議決定することを目指している。与党にも現実を踏まえた論議を求めたい。
(2月2日付社説)