G20会議、協調して世界経済の成長図れ
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、世界経済の成長率を5年間で2%以上押し上げるとの目標を盛り込んだ共同声明を採択した。
成長に関する数値目標の設定は異例だが、それぞれに課題を抱える先進国と新興国の対立を回避するため、各国は協調して世界経済の成長加速に努めるべきである。
異例の数値目標設定
今回の共同声明の背景には、今年に入ってアルゼンチンやトルコ、ブラジルなどの一部新興国の通貨が急落し、世界各国で株価が下落するなど金融市場が混乱したことがある。
これらの新興国は経常赤字やインフレ率が高いなど構造的な問題を抱えているが、特に米国の量的金融緩和の縮小によって、それまで流れ込んでいたマネーが逆流して通貨安に拍車が掛かった。新興国の中には、米国に資金流出の責任を転嫁する声がある。
声明は、問題のある新興国について「経済の脆弱性への対応が必要だ」として構造改革への努力を促した。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)など各国中央銀行に対しては、世界経済に与える影響に配慮した慎重な政策運営や「市場との明確な意思疎通」を求めた。
ただ、これだけでは先進国、新興国が互いに要求をぶつけるだけで、対立が先鋭化しかねなかった。それを回避したのが、今回会議の議長国オーストラリアのホッキー財務相が提唱した成長目標の導入提示である。
「今後5年間で2%以上の成長率押し上げ」という目標は、数値そのものよりも、まずは世界経済の成長が何より重要であるとの認識を共有することに意義がある。
国内総生産(GDP)で世界の85%を占めるG20全体の成長が加速すれば、輸出の増加という形で新興国に恩恵が及び、構造的な課題を克服しやすくなるからである。逆に共通目標がないまま、先進国と新興国との間にきしみが生じれば、小康状態の新興国通貨が再び急変動することになりかねない。
G20は11月に行われる首脳会議(サミット)に向け、雇用拡大などのための包括的な成長戦略を策定する。
声明は世界経済の現状を「改善の兆しを歓迎」とし、特に日米と英国の成長の強さに言及して世界景気が極端に悪化するリスクは低下しているとした。
もっとも、わが国は4月に消費税率引き上げを控え、その後の景気の腰折れを懸念する声が少なくない。一昨年末以来の「アベノミクス」による円安にもかかわらず、輸出は伸び悩み、設備投資も伸びは高くない。先の昨年10~12月期GDP統計で見た個人消費も、駆け込み需要があるにもかかわらず盛り上がりに欠けた。
実効ある成長戦略を
日銀の黒田東彦総裁はG20終了後の記者会見で「日本は、より高い成長の実現を目指すことで世界経済に貢献していく」と述べた。
そのためには、2013年度補正予算に盛り込まれた5・5兆円規模の経済対策を早期に実施するとともに、実効ある成長戦略を打ち出す必要がある。
(3月1日付社説)