ウクライナの親欧米派は今度こそ団結せよ


 旧ソ連のウクライナで広がった欧州連合(EU)加盟を求める反政権勢力の抗議活動は、治安部隊との衝突で多くの犠牲者を出した末、親露派ヤヌコビッチ政権の崩壊をもたらした。実権を掌握した親欧米派は、2004年のオレンジ革命以降に自ら招いた政治的混乱を繰り返すことなく、国の安定に全力を傾けるべきだ。

 オレンジ革命後に内紛

 ヤヌコビッチ政権は昨年11月、EUとの関係強化を目指す「連合協定」の締結を中止した。ウクライナ製品の禁輸を行い、天然ガス輸出停止などを示唆するロシアの圧力に屈した形だ。

 これに反発する野党勢力は約3カ月にわたって反政権デモを続けた。80人以上が死亡したデモ隊と治安部隊の衝突を受け、最高会議(議会)はデモ隊要求の04年憲法を復活させて権限を掌握、大統領解任を決議した。ヤヌコビッチ氏は首都キエフを逃げ出し、親露派住民の多い同国東部に潜伏しているとみられる。親EU派のティモシェンコ元首相の盟友、トゥルチノフ氏が議長兼大統領代行に就任し、5月に大統領選を行う予定だ。

 しかし、ウクライナは歴史的に東部と西部の対立を抱えており、行く手には不透明感が漂う。汚職にまみれたヤヌコビッチ氏を与党・地域党は見限ったが、親欧米派の伸長には警戒感を隠さない。

 最高会議は東部住民に配慮した「ロシア語公用語」法を廃止した。こうした中、ロシア系住民の多いクリミア自治共和国では、ロシアへの帰属を求める動きも強まっている。

 親欧米派内にも多くの対立がある。オレンジ革命で政権を握った親欧米派は連立政権を発足させ、ユーシェンコ氏を大統領、ティモシェンコ氏を首相とした。しかし、両氏は激しい主導権争いを繰り広げ国政を混乱させた。

 06年の議会選では、親露派の躍進を目の当たりにしながらも親欧米派は内部対立を続け、4カ月半も首相を選出できないという前代未聞の政治混乱の末に連立を崩壊させた。親欧米派は民衆の期待を裏切り続け自滅し、10年の大統領選でヤヌコビッチ氏が当選した。

 トゥルチノフ大統領代行は将来的なEU加盟に意欲を示した。しかし、ウクライナはこれまで痛みの伴う経済・社会制度改革には踏み出さず、産業構造も旧態依然のままだ。エネルギー供給、製品の輸出先もロシアに大きく頼っている。

 ウクライナは巨額の対外債務を抱えており、同国の安定のためには国際社会の支援が欠かせない。

 しかし、何よりも重要なことは、親欧米派がオレンジ革命後に繰り広げたような、ぶざまな内紛に陥らず、一致団結し、安定した国家をつくるために最大限の努力をすることだ。その決意があって初めて、国際社会は手を差し伸べるだろう。

 東西間の溝克服を期待

 ロシアと欧州の間に位置するウクライナは地政学的に重要な位置を占め、同国の安定は地域の安定に直結する。東部と西部の歴史的な溝を克服し、安定した国家に生まれ変わることを期待したい。

(2月28日付社説)