入学者の確保へ、オープンキャンパスを開催

昨年4月開校の北海道立北の森づくり専門学院で

 今も昔も北海道は全国最大の林業大国である。一方、戦後輸入材の増加で国内林業は停滞を余儀なくされる時期があった。だが、近年、木材に対する関心の高まりから道産材の自給率が増加傾向にある。そんな中、質の高い林業技術者養成と道内林業の振興を目的にして昨年4月、北海道立北の森づくり専門学院が設立された。今年7月に開催された、来年度入学者のためのオープンキャンパスには道内外から80人近くが参加するなど道内林業への関心の高さを見せた。(札幌支局・湯朝 肇)


独特な学校説明会、高性能重機による伐採をじかに見学

入学者の確保へ、オープンキャンパスを開催

北海道立北の森づくり専門学院オープンキャンパスでの説明会

 「森林は単に木材を生産するにとどまらず、土砂崩れを防ぐといった防災機能、美しい景観をつくるなどの地域振興、さらに森林は二酸化炭素(CO2)を吸収するため環境保全機能を有しています。最近は木のぬくもりを求めて、木材家屋が人気になるなど木材への需要が高まっています。木材需要の高まりに対応するためにも優秀な森づくりのエキスパートが必要になっています。ぜひ皆さんには当学院で学んでほしい」――7月31日、旭川市西神楽にある北海道立北の森づくり専門学院(略称、北森カレッジ)で開かれたオープンキャンパスで寺田宏学院長はこうあいさつで語った。

 同学院では今年度、5回にわたって学校説明会を行うことにしているが、この日のオープンキャンパスは、そのうちの一つ。ただ、他の説明会と違うところは参加者全員が市内近郊の山林に出向き、ハーベスタなど高性能の大型林業機械による樹木の伐採風景を、じかに見学できたこと。実際に日常で行われている林業の業務の一端を参加者に体感してもらうことが目的だった。

質の高い技術者養成が目的、最大で14の資格を取得可能

入学者の確保へ、オープンキャンパスを開催

高性能の大型林業機械を間近で見る参加者

 この日の模擬授業ではまず、北海道の林業・木材産業の現状を紹介。「道内の森林面積は全国の22%を占め、全国に比べて人工林よりも天然林が多いのが特徴。これまで植えられてきたカラマツやトドマツなど資源が充実して利用期を迎えている」(佐藤圭・教務課長)と語り、道内林業の明るさを強調。さらに同学院の魅力について、「林業は苗木づくりから間伐、主伐(収穫)まで40年の期間を要する息の長い産業。いうなれば次世代につなげる産業だといってもいい。そうした中で当学院では、林業や木材産業で働くために必要な最大で14の資格を取得することができる。

 また、2年間で学ぶ授業の約3分の2は実習で現場での学びを重視しているのが特徴。さらに道内全域を学習のフィールドとしており、いわば北海道が丸ごとキャンパスという意識で学習できる」(同)と述べる。

 オープンキャンパスが実施された7月31日の旭川市内の気温は36度を超える猛暑日であったが、模擬授業の他に屋内ではフィンランド製シミュレーターによる操作手順の説明や屋外では在校生がチェーンソーを使って立木伐倒の実演が行われた。

「迫力があった」「林業への関心高まった」と参加者

 この日、江差町から親子で参加した日本体育大学付属高等支援学校2年生の浜野新一朗さんは「今日は父に連れられて参加しました。実際に山林に出て大型の林業機械が伐採したり枝払いするのは迫力がありました。林業への関心も高まりました」と語る。また、札幌市内にある商業高校3年生の男子生徒は「林業にはもともと関心がありました。今回、現場で見学して興味が増しました。正直、林業に関わっていきたいと思います」とうれしそうに話す。

 北海道立北の森づくり専門学院の定員は40人で修学期間は2年間。現在、同学院には全体で73人が学んでいる。その内訳は10代から30代。また、道外出身者は11人と広い範囲にわたっている。森づくりを通して人を育てる教育に今、道民の目が注がれている。