玉城デニー沖縄県知事が政治団体の広告塔に?
沖縄県の玉城デニー知事はこのほど、知事に近い女性が深く関わる政治団体が運営する講演会に公務として参加し、祝賀メッセージを送った。県議会の自民会派は6月30日開会の第4回定例会で、知事が団体の広告塔として利用された疑いがあるとして激しく追及した。(沖縄支局・豊田 剛)
万国津梁会議に続く新たな疑惑、講演会に公務で参加
知事が祝辞を送ったのは「梨の木ピースアカデミー」(NPA)という営利団体。オープン記念「スペシャルトークイベント」にオンライン参加し、あいさつした。動画は6月20日、県庁の会議室で県章をバックに撮影されたものだ。
この件について、島袋大県議は7日の代表質問で、知事を問いただした。知事は「日韓をはじめとした東アジアの市民交流・学生交流・観光交流の活性化に向けたトークイベントと認識している」と述べた。
「昨年夏以降の日韓情勢で韓国人の観光客が減少したことを受け、10月に訪韓した経緯があることから、地域間・市民間交流の活性化をしたい思いがあり、今年1月にソウル市教育庁所属の教員の代表団が私に表敬訪問を行った経緯があることで了解した」
出演したきっかけについてはこう述べた。
文化観光スポーツ部の渡久地一浩部長は、「NPAのイベントは秘書課を通して参加依頼があり、公務として受け付けた」と説明した。
問題のオープニングイベントについて、NPAのウェブサイトは次のように書いている。
<内海愛子NPA共同代表(大阪経済法科大学)のあいさつに始まり、東アジアの平和構築をテーマに、玉城デニー沖縄県知事から祝辞を、ソウル市のチョ・ヒヨン教育監には基調講演をいただきました。上村英明教授(恵泉女学園大学)と李泳采(イ・ヨンチェ)NPAコーディネーター(同大)からは、現状の市民社会の課題とNPAが今後期待される役割についてお話いただきました>
イベントでは、「各地からのメッセージ」として、秋田、三里塚、韓国、沖縄、福島、水俣からメッセージが寄せられた。
中でも、上村氏は、先住民族の国連活動を支援している市民外交センター代表で、翁長雄志前知事が国連演説した際に発言枠を提供した人物。また、イ・ヨンチェ氏は反日思想が強い人物、チョ・ヒヨン氏については自殺した朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長に近い人物で、こちらも反日思想が強いとされる。
母体の出版社は反日思想色濃く、辺野古移設阻止呼び掛け
NPAの母体は「梨の木舎」という出版会社だ。同社のウェブサイトでは「日本のアジアへの進出の歴史を知るということと、女性差別的な日本の社会を変えたいということです。戦争は差別を飲み込んでいきます。辺野古の海を埋め、軍備拡張路線をひた走る安倍政権を止めましょう」と呼び掛けている。
こうした背景からみても、照屋守之県議はNPAのウェブサイトは「政治サイト」だと言い切る。西銘啓史郎県議は、こういう政治的なものに「公務として沖縄県として応援するようなことをするのはいかがなものか」と疑義を唱えた。
知事が参加したオープニングイベントは有料講座の入り口の役割を果たすもので、1講座当たり9千円の有料サイト。島袋氏は「あなたは広告塔として利用されている」と声を荒らげた。
NPAの沖縄問題の講座の多くは徳森りま氏が金城リンダ名義で講義をしている。徳森氏は、玉城知事が肝煎りで始めた諮問会議「万国津梁会議」の支援業務を受託した「子ども被災者支援基金」(山形県)の沖縄代表を務めた人物だ。玉城知事が全国各地で基地負担軽減を訴える「全国トークキャラバン」の代表も徳森氏が務める。
徳森氏が講師として参加していることについて玉城知事は「関知している事実を知らない」と答弁した。ところが、代表質問が空転して休憩となったわずか20分の間に、NPAのサイトから知事の祝辞と金城氏が出演する動画2本が削除された。島袋氏は「やましいことがなければ削除されないはず」だと指摘した。
玉城知事は「子ども被災者支援基金」と業務委託を締結した前日の2019年5月23日、徳森氏を含む受託業者らと会食をしていたことが県議会で問題となった。ただ、徳森氏は同年9月30日付で同基金を退職している。
「知事は最近、徳森氏との交流はないか」という島袋氏の質問に対し、玉城知事は「個人的な会合(会食)以来、会っていない」と述べ、今回のイベント出演は徳森氏とは無関係であると主張。また、県当局は「知事が有料講座に勧誘した事実はない」と疑惑払拭(ふっしょく)に努めた。
疑惑が多い万国津梁会議の業務委託に関し、現県政に批判的な県民4人はこのほど、県が支払った委託料約2160万円の返還を知事に求める住民訴訟を那覇地裁に起こし、17日に第1回口頭弁論が行われた。







