日本は新情報機関の設立を

「情報戦争」時代と米国(下)

安保専門コラムニスト ビル・ガーツ氏に聞く

トランプ米政権は情報戦争時代にどう対応すると考えるか。

ビル・ガーツ

 情報戦争能力を強化させることは、トランプ政権における喫緊の課題の一つだ。トランプ政権は情報戦争に対して効果的で新しい行動が必要だと理解している。また、敵からの攻撃をどのように防ぎ、攻撃を受けたらどう対処すべきかという「サイバー抑止力」を作り出す方法を検討している。

 トランプ氏はレーガン政権流の「力による平和」を目指している。私は「力による平和」と同時に、敵を抑えるための情報戦争能力を持つ「情報力による平和」を提言したい。

トランプ氏は、自身に不利な情報を情報機関がメディアにリークしていると批判している。これについてどう考えるか。

 情報機関内の不穏分子による行動であり、正式に選ばれた大統領を支援するのではなく、入手した情報を使って政権を弱体化させようとする政治的な戦いだ。これはオバマ政権下で行われた情報機関のリベラル化の結果であり、予測できなかったことではない。

情報戦争時代の脅威に対応するため、日本はどのような能力が必要か。

 日本は外国の脅威、特に中国の脅威に対抗する、より効果的な情報戦争能力を早急に開発する必要がある。日本政府はそれを理解している。数年前に日本の防衛副大臣と会った際、中国が日本に対して世論戦、法律戦、心理戦の「三戦」を用いていることを語った。これは、日本が中国に対して同様の行動で対抗する必要があると認識するための第一歩だ。

 偽情報を流布する中国の作戦に対処する能力も求められている。これには情報戦争に対応できる新機関の設立が必要となる。

中国や北朝鮮からのサイバー攻撃に対して、日本は反撃する必要があるということか。

 そうだ。サイバー攻撃に対する反撃は敵にコストを掛けさせる能力でもあり、サイバー抑止力の効果もある。そのような能力がなければ、サイバー攻撃や情報戦争に対して無防備な状態にさらされる。

著書『iWar-情報化時代の戦争と平和』で、21世紀に適応した新しい米国の情報機関創設を訴えている。どのような組織が望ましいか。

 1999年に独立機関であった米情報文化局(USIA)が国務省に統合されたことは間違いだった。国務省は敵対国が流布する偽情報に対して反撃したり、自由・民主主義の理想を普及させることに積極的ではないからだ。現在、そうした役割はメディアに担ってもらおうとしている。だが、メディアは(偏向報道などにより)危機に陥っている。

 このため、政府と民間で協力して半独立機関を設立することが望ましい。どこか一つの政府機関に属すれば他の機関から支援を受けられなくなるからだ。独立機関なら国務省や情報機関、国防総省のほかにホワイトハウスからも支援を受けることができる。

(聞き手=ワシントン・岩城喜之)