北朝鮮の能力過小評価
安保専門コラムニスト ビル・ガーツ氏に聞く
ロシアは情報戦争の能力を強化しているが、最大の目的は何か。
情報戦争におけるロシアの問題は、プーチン大統領が米国を敵としていることだ。昨年の米大統領選におけるサイバー攻撃はトランプ氏を支援したものだったが、プーチン氏の最終目的は米国の民主主義体制を弱体化、あるいは分裂させることだ。
トランプ氏はロシアとの関係改善を訴えているが、残念ながらうまくいくとは思わない。ロシア政府が米国を敵国と見なしている限り、あらゆる協力は失敗するだろう。
ロシアは旧ソ連の国家保安委員会(KGB)のような組織である「国家保安省」(MGB)を新設する方針だが、どのような組織になるとみるか。
ロシア連邦保安局(FSB)を中心に軍の情報機関と対外情報局(SVR)が合流することになるだろう。(MGBの創設は)プーチン氏が反対派を妨害して権力支配を維持するために、より強力な機関や基盤が必要だと考えていることを示している。
MGBが創設されたら、世界にどのような影響を及ぼすと考えるか。
ロシアで民主主義改革を起こすことが、より難しくなるだろう。プーチン氏が権力を固め、ファシスト国家を造り出す手助けにもなる。
プーチン氏のイデオロギーはロシアのナショナリズムだ。彼は旧ソ連諸国をコントロールしたがっており、権力の維持を目標としている。
北朝鮮は2014年にソニーに対してハッキング攻撃を仕掛けた。北朝鮮の情報戦争能力をどう評価するか。
北朝鮮は中国、ロシアに続く脅威だ。彼らは急速に情報戦争の能力を得ている。私がインタビューした脱北者は、ハッキング活動に従事するハッカーをどのように訓練したのか説明した。彼は西側諸国にとって極めて深刻な警告を発し、北朝鮮の能力を見誤らないよう訴えた。
米政府や情報機関は、中国やロシアがあまりにも破壊的なサイバー攻撃能力を有しているため、北朝鮮のサイバー能力がそれほど強力でないと思っている。だが、米国はインフラへの攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)であるため、北朝鮮が能力開発に取り組んでいることは懸念すべき事柄だ。
ソーシャルメディアの拡大は、情報戦争にどのような影響をもたらしたのか。
ソーシャルメディアはさまざまな形で情報戦争の新しい戦場となっている。最も注目すべきことは、過激派組織「イスラム国」(IS)や他のテロ組織がソーシャルメディアを利用して作戦を実行したり、テロを行う戦闘員を勧誘していることだ。
ソーシャルメディアは新しいメディアであるが故に、情報戦争に悪用される可能性がある。また、伝統的なメディアとは違って個人で発信できるため、ますますソーシャルメディアの「兵器化」が進むだろう。
(聞き手=ワシントン・岩城喜之)






