バイデン大統領で米国民は結束できず

エルドリッヂ研究所代表 政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

トランプ支持者見下す発言
不正選挙を「陰謀論」と切り捨て

エルドリッヂ氏

エルドリッヂ研究所代表 政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

 ジョー・バイデンは、アメリカ合衆国憲法に定めている手続きを踏んで第46代米大統領に就任した。就任式は「アメリカ・ユナイテッド」をテーマにした。つまり、去る11月の大統領選挙によって一層進んだ分断されている米国を再結束するということだ。

 就任式を主催する委員会によると、テーマは「アメリカの魂を取り戻し、国を一つにし、より明るい将来への小道をつくる始まりを反映している」というが、これは具体性を欠き、アメリカの政治を長年ダメにし、国民を騙(だま)してきた、単なる決まり文句にすぎない。

 もちろん、そうなってほしいのだが、選挙中、「ファット・ガイ(デブ)」「ホース・フェイス(馬面)」「ライアー(嘘つき)」などと有権者を批判し、「ボート・フォー・ジ・アザー・ガイ(相手に投票しろ)」「シャット・アップ(黙れ)」と言ってきた候補が一国の大統領として国民をまとめることが果たしてできるか正直、疑問だ。

「教育水準低い」と嘲る

 彼だけではない。その周辺をはじめ、彼の支持者たちも激しくドナルド・トランプ(前大統領)に投票した国民を批判している。

 最近での強烈な発言は、2016年の大統領選でトランプに負け、憎しみを持つヒラリー・クリトン(元上院議員かつ元大統領夫人)が述べたことだ。米紙ワシントン・ポストに掲載された論点でクリントンは、その前の週の1月6日に起きた連邦議会議事堂への突入事件に言及し、トランプの支持者は「国内テロリスト」で、「追及」し「監視」されるべきだと書いた。さらに記憶に新しいと思うが、16年の選挙期間中、トランプを支持する共和党系の有権者を「嘆かわしい」と批判、大きな反発を招いた。

 長年、共和党系の有権者は、「教育水準が低い」「田舎者」「白人至上主義者」などと、民主党やエスタブリッシュメントからバカにされてきたが、今はバイデンの一般支持者やメディアによってその傾向は一層強くなっている。

 特に強くなってきたのが、ボーター・シェイミング、いわゆる投票行動に対する批判だ。4年前の選挙ではトランプは「逆転勝利」とされていたが、そうではなく、事前の世論調査では、「トランプを支持している」と答えられなかっただけだ。回答者はバカにされるから、静かにしていたという。

 今回の選挙では、国民が一層分断された。筆者の親戚の一人は、「トランプを支持した友人がいれば、これ以降、友達ではありません。(家族も)」とまでインターネット交流サイト(SNS)に書き込んでおり、悲しくなった。

 バイデンの「勝利」を祝うばかりで、「メディアの不公平性」、投票の「不正」などを見ようとせず、民主党内の問題点、バイデンの適任性については一切検証していない。その代わりトランプを批判し、その支持者をバカにしているだけだ。これでは国民が「結束」できるはずがない。ある最近の世論調査によれば、「最も敵とみなすのは誰か」に対して、55%が「違う価値観のある国民」と答え、「外国の軍隊」の8%より約7倍も高かった。

 それどころか、不正選挙であったことさえ議論ができない。例えば、無視できないほどの証拠が出ているにもかかわらず、リポーターや評論家たちは、それがなかったかのように否定している。

 悲しいことに、選挙の時の不正は「陰謀論」と切り捨てるIT企業や主要なSNSなどの検閲によって、自由な投稿や転送ができないようになっている。トランプ自身のツイッターさえも永久停止になった。

 バイデンですら、「再びお互いを見て、聞くことが大切」と選挙の4日後の11月7日に国民に呼び掛けた。しかし、SNSでコメントやアカウントが削除される中で、対話が不可能な状態をバイデン支持のIT企業や情報関連企業が自らつくってしまった。

危険な党派による検閲

 検閲そのものは民主主義にとって危険だが、明確な基準や一貫性がない「党派」による検閲はもっと危険だ。

 最近の別の世論調査によれば、米国民の3人に1人、共和党系の支持者の4人に3人はトランプが勝ったと思っている。

 いくら事実を隠蔽(いんぺい)し、無視しようとしても、今後も、どんどん不正を暴く事実が出てくる。そうなると、バイデン政権の正当性がますます低下し、統治だけではなく、国民分断の「修復」は難しくなる。(敬称略)