ロシアの安保戦略、かえって孤立を深めないか
ロシアのプーチン大統領は昨年の大みそかに「ロシア連邦の国家安全保障戦略について」と題する大統領令に署名した。2009年5月に作成された「2020年までの国家安全保障戦略」に代わるもので、署名と同時に発効した。
「戦略」はウクライナ危機をめぐって対立する欧米諸国を警戒する姿勢が強い。ロシアの孤立を深めることにならないか。
中国とインドを重視
軍事、外交、経済政策の指針となる「戦略」の最初のバージョンは、1997年にエリツィン大統領が署名した「国家安全保障のコンセプト」であった。そのあと、2000年に2番目の「コンセプト」が発効。さらに09年に当時のメドベージェフ大統領が署名した「2020年までの戦略」に改定された。
この「メドベージェフ戦略」を書き直すことについては、ロシア安全保障会議のパトルシェフ書記が昨年4月に明らかにしていた。「アラブの春」や、シリアとイラクの情勢、さらにウクライナ危機などで、国際情勢が大きく変化したため必要と説明された。
新「戦略」は、中国に関して「ロシアは中国との全面的パートナーシップと戦略的互恵関係を、グローバルかつ地域的安定確保の重要な要素と見て、発展させている」と述べ、インドについては「ロシアはインドとの優先的な戦略的パートナーシップに重要な役割を割り当てている」と指摘した。
東方政策に重点を置くプーチン政権はアジア諸国の中で特に中印両国とのパートナーシップをより確実にし、さらなる関係強化を図る構えだ。「戦略」には「ロシアはアジア太平洋において地域の安定と安全の確実な保障のメカニズムをつくり、この地域の国々との政治的、経済的な協力の効果を高め、科学、教育および文化面での相互関係を拡大することに賛成する」との記述がある。
「戦略」によれば、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の拡大を「脅威」と見なしており、ロシアの「独自の内外政策」が米国とその同盟諸国の反発を引き起こしてきた。1949年に12カ国でスタートしたNATOの加盟国は現在28カ国。2009年にはアルバニアとクロアチアが正式に加盟した。モンテネグロが29番目の加盟国になる交渉が昨年12月に始まったと言われる。
「戦略」は、米国によるミサイル防衛(MD)システムや、ウクライナにおける“違憲グループ”支援を指摘するとともに、ロシアの周辺に“軍事・生物化学兵器実験場のネットワーク”を拡大していると米国を批判した。一方、ロシアは米国との完全なパートナーシップの構築に関心があるとも述べ、テロとの戦いや地域紛争の解決での米露の協力拡大を呼び掛けた。
欧米との協調に努めよ
ロシア安全保障会議の報道官は、改定「戦略」によってロシアは外界からの孤立の回避を目指し、より積極的な外交を展開することになろうと言明した。だが、ロシアはウクライナ危機への対応を含め、欧米との協調を目指さない限り、孤立を脱却することはできない。
(1月22日付社説)