シリア北部からの米軍撤収に福音派が反発


トルコの攻撃で少数派が犠牲に

 米国の福音派キリスト教徒ら宗教団体が、シリア北部からの米兵撤収の決定に反発している。福音派など宗教保守は、トランプ米大統領の支持基盤であり、在外米軍の撤収という公約順守を目指すトランプ氏にとって予想外の逆風となる可能性がある。

 撤収反対は、シリア北部に安全保障の空白地帯が生まれ、キリスト教徒、ヤジディ教徒など宗教的少数派が攻撃の危険にさらされる可能性があるため。さらに、トルコのイスラム主義の影響力が強まり、過激派組織「イスラム国」(IS)が復活することも懸念されている。

 トルコは9日、シリア北部のクルド人勢力への攻撃を開始した。英国に拠点を置くシリア人権監視団によると、同日の攻撃で8人が死亡、そのうち2人は、シリア人キリスト教徒だった。

 福音派の牧師でもあるアーカンソー州のハッカビー知事はツイッターで、シリア北部撤収を「巨大な間違い」と主張、テレビ宣教師のパット・ロバートソン師は、自身のテレビ番組で、「(撤収を)実施すれば、天命を失う危険がある」と警告した。

 「米国際宗教の自由委員会(USCIRF)」のトニー・パーキンス議長は、「多様な宗教、民族からなるこの地域のコミュニティーが、トルコが起こそうとしている暴力的混乱の犠牲になろうとしている」と非難した。

 シリア北部はシリア民主軍(SDF)が支配しており、地域内での宗教的少数派に対する寛容な対応がこれまでも指摘されてきている。シリア人口の約10%はキリスト教徒で、シリア北部のSDF支配地域には約1万人のヤジディ教徒が依然、住んでいるとみられている。

(ワシントン・タイムズ特約)