シリア問題、アサド政権存続は容認し難い
シリア和平を仲介するロシア、トルコ、イラン3カ国の首脳会談がロシア南部のソチで行われ、ロシアが提案した「シリア国民対話会議」を開催する方針で一致した。
影響力確保を狙う露
国民対話会議は、シリアのアサド政権と反体制派を集め、新憲法制定などを議論するもの。当初は18日にソチで開催予定だったが、反体制派の反対で延期されていた。今回の首脳会談でも日程などは決まらなかった。
シリア内戦をめぐっては10月末、アサド政権を軍事面で支援するロシアとイラン、反体制派の後ろ盾のトルコの3カ国が停戦の「保証国」として仲介した和平協議がカザフスタンで開かれた。しかしアサド政権と反体制派の対立は根深く、緊張緩和につながるか予断を許さない。
10月中旬に過激派組織「イスラム国」(IS)がシリアで「首都」としていた北部ラッカが陥落。ISの影響力が低下する中、ロシアは大きく失地を回復したアサド政権の存続を前提に和平協議を進め、中東におけるロシアの存在感を確保したい考えだ。シリアの基地にロシア軍部隊を駐留させるなど、ロシアにとってシリアは重要な戦略拠点となっている。ロシアのプーチン大統領は3カ国首脳会談に先立ってアサド大統領と会談し、シリア問題でロシアが主導権を握っていることをアピールした。
だが、多くのシリア国民を虐殺したアサド政権の正統性はすでに失われている。ロシアが自国の利益のため、アサド政権を存続させることは容認し難い。
国連安全保障理事会は、シリアでの化学兵器使用疑惑を調べる国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の合同調査チームの任期を30日間暫定的に延長する日本提案の決議案を採決。だが、ロシアが拒否権を行使したため否決された。安保理はこれまでに任期を1年間延長する米作成の決議案を2回採決したが、いずれもロシアの拒否権行使で否決されている。
合同調査チームは10月、アサド政権が猛毒の神経ガス、サリンを使用した「責任があると確信している」と認定する報告書を安保理に提出。シリアやロシアは政権による使用を否定しているが、真相究明には調査チームの任期延長が欠かせないはずだ。ロシアの姿勢は事実の解明を妨害していると受け取られても仕方があるまい。
トルコのロシアへの傾斜も懸念される。シリア内戦に関し、トルコはロシアとの対話を重視し、米国抜きで和平協議が行われている。さらに北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありながら、NATOと緊張関係にあるロシアの防衛システム導入計画を進めている。
トルコはシリア内戦におけるクルド人勢力の扱いや在米イスラム指導者ギュレン師の身柄引き渡しなどをめぐって米国と対立し、米トルコ両国は10月、双方の国民に対するビザ発給業務を停止した。トルコの姿勢がアサド政権の存続につながるとすれば問題だ。
欧米諸国とも協議せよ
シリア和平とアサド政権退陣への道筋を付けるため、ロシアなどは米国や欧州主要国とも協議する必要がある。