テロ支援国再指定、北朝鮮への圧力強めていけ
トランプ米大統領が北朝鮮をテロ支援国家に再指定した。2008年に当時のブッシュ政権が指定を解除して以来、9年ぶりのことだ。北朝鮮が国際社会の批判や自制を求める声を無視して核・ミサイルの脅威を高め、テロ行為を繰り返してきたことを考えれば当然の措置である。最大限の圧力によって北朝鮮の暴走に歯止めをかけなければならない。
金正男氏殺害など念頭
テロ支援国家の再指定は2月に北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男氏がマレーシアで殺害された事件や米国人大学生が北朝鮮に1年以上にわたって拘束された上、脳に重い障害を負って解放後に死亡したことなどを念頭に置いたものだ。米議会から再指定を求める声が上がっていた。
先のトランプ大統領による日韓中などアジア諸国への歴訪で北朝鮮の核問題をめぐり成果が乏しかったことも再指定につながったようだ。日米韓3カ国が結束を図り、中国が対北制裁を強化することが期待されたが、トランプ大統領は経済的利益の確保を優先させたようで、結果的に中国に決断を迫ることができなかった。
すでに北朝鮮は国際社会から多くの制裁を科されており、テロ支援国家再指定は象徴的な意味合いが強いとの見方もある。ただ再指定されれば、まだ制限を受けていない北朝鮮との取引や交流などでも相手国側がやりにくくなるのは必至だ。
北朝鮮は今回の措置に対し早速、「『テロ支援国』のレッテルを貼り付けたのは尊厳高いわが国に対する重大な挑発」と反発し、米国との対決姿勢を鮮明にしている。再指定を口実にした軍事挑発に出てくることも予想され、警戒を怠れない。
拉致問題を抱える日本としてはテロ支援国家再指定をテコにし、解決への糸口を見いだしたいところだ。横田めぐみさんが拉致されて今月でちょうど40年だ。拉致被害者の家族会が結成され今年で20年の節目を迎えた。被害者と家族は北朝鮮のテロに今も苦しめられている。
日本だけで解決するのではなく、国際社会との連携も重要になろう。イスラム過激派などが近年頻繁に引き起こす各種のテロ行為を断固たる姿勢で非難するのと同じく、北朝鮮のテロ行為にも国際社会が結束して臨まなければならない。
そもそも北朝鮮に対するテロ支援国家指定は、その時々の国際情勢や指導者の判断で指定したり解除したりすべきものではないはずだ。北朝鮮は建国以来、一貫して独裁体制を維持し、そのために必要と判断すればテロも辞さなかった。北朝鮮が民主化などを経て自由や人権などの価値観を持たない限り、今後もこうしたテロは繰り返される可能性が大きいことを忘れてはならない。
中国への圧力の側面も
今回のテロ支援国家再指定には中国の対北政策への圧力という側面もありそうだ。北朝鮮問題をめぐり手詰まり感も漂い始める中、中国を国際社会の対北包囲網に積極的に関わらせるためにも北朝鮮への圧力を強めていくべきだろう。