カタール断交、米政権交代が引き金に

ムスリム同胞団とアラブ モハメド・F・ファラハト氏に聞く(1)

 サウジアラビアとエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンのアラブ4カ国が、6月5日、カタールと断交して、まもなく3カ月が過ぎようとしている。断交の理由の一つが、過激派諸組織への支援を続けるイスラム主義組織「ムスリム同胞団」を擁護するカタールへの糾弾だった。アルアハラム・政治戦略研究所のモハメド・ファイエズ・ファラハト氏に「ムスリム同胞団」を軸に聞いた。(カイロ特派員・鈴木眞吉)

アラブ4カ国がカタールと断交した理由は何か。

モハメド・F・ファラハト氏

 モハメド・ファイエズ・ファラハト 1992年カイロ大学政治経済科学学部学士号。アルアハラム政治戦略研究所研究員を経てアルアハラム財団事務局長。現在は事務局長を退き、研究に専念。

 第一の理由は、シリア問題でのイランのアラブ諸国内への影響力がカタールによって支えられていることだ。リビア情勢に対する影響力もある。カタールとイランとの関係はイエメンにも及んでいる。

なぜ、今年6月になってなのか。

 決断する適切な時ではなかったということだ。多くの報告によると米国のオバマ前政権はムスリム同胞団(同胞団)を支援し、シリアの他の過激派グループと関係を持ちながらアサド政権に反対の立場を取っていた。しかし、トランプ政権になって状況は変化した。

 トランプ大統領が、この地域のテロリズムについて語ったので、エジプトとサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)がカタールに、この地域でのネガティブな役割、即ち同胞団との強い関係を公式に非難できた。

 エジプトは過去何度も米政権に対しそのことを語ってきたが、聞く耳を持たなかった。これははっきりしたことで、エジプトでの同胞団政権(モルシ政権)崩壊後、同胞団の主な人物はカタールに逃亡したのだ。カタールとトルコ以外に逃れる国がなかった。

 カタールの衛星テレビ局アルジャジーラは、エジプト軍、新政権(シシ政権)を批判するなど、同胞団擁護の主張を止めなかった。

 エジプトやサウジはカタールと同胞団との関係についての証拠をたくさん持っている。アルカイダや「イスラム国」(IS)のような暴力的グループとの関係についての証拠もだ。

具体的な証拠は何か。

 具体的証拠については話すことはできない。同胞団の問題はイデオロギーにある。そのイデオロギーはテロリズムと関係があるということだ。

 エジプトの最も過激な「イスラム団」グループは、母体の同胞団から分派し、彼らのイデオロギーを確立した。イスラム団やISなど聖戦主義グループの課題は、イスラム国家の建国だ。

 同胞団はイスラム国家を下から創るべきだと主張している。だから、イスラム国家の前にイスラム社会だと言う。したがって、政権と協力することも受け入れ、議会にも入り、選挙にも参加する。同時に彼らのネットワークを構築するのだ。病院や学校、職場、チャリティーなどだ。

 これらのネットワークを通じてイスラム社会に導き、人々をリクルートし、イスラム国家建設につなげるのだ。

 それに対し、イスラム団の主張は、イスラム国家を上から作る。すなわち、現政権を崩壊させ、イスラム法を施行してイスラム社会にする。命令によってイスラム社会を創るという方法だ。上から下へだ。