警戒するアラブ諸国 トルコが同胞団の拠点、欧州に浸透も

ムスリム同胞団とアラブ モハメド・F・ファラハト氏に聞く(3)

カタールに経済支援や軍事協力を申し出たトルコのエルドアン大統領は、ムスリム同胞団の国際組織の長との噂(うわさ)もあるが。

モハメド・F・ファラハト氏

その通りだ。エルドアン氏は自身がイスラム世界の代表だと考え、オスマン帝国の再建を試みている。ムスリム同胞団がエジプトで政権を握ったモルシ政権時代、彼は同胞団を使いイスラム世界に自身の権威を拡大しようとしたことは明らかだ。しかし、彼は困難に直面している。モルシ政権崩壊に続き、シリアの同胞団のプロジェクトも困難になった。イエメンでも、スーダンモデル(政権と同胞団が協力する方式)を追求したが難しい。結局、エルドアン氏は、シリア、リビア、イエメンでのアラブの春を通じてイスラム国家建設を試みたが、そのプロジェクトは失敗したと思う。

 トルコは現在、非常に大きな問題を抱えている。どうしてエルドアン氏がカタールと協力しているかというと、それ以外のオプションがないからだ。アラブ社会は同胞団について大変、神経質になっている。

欧州での同胞団の動きはどうか。難民を同胞団が組織化する恐れはないか。

 その憂慮は正しい。同胞団のグループは賢く、経験も豊富であり、立場や性質を言わないので、難民らを感化することは容易だ。エジプトの例だが、同胞団は人々に受け入れられ、尊敬されるように、多くのサービスを提供する。例えば、健康、医療など安い価格で紹介し、公的サービスより質が高い。決して政治的見返りを求めず、ただ、サービスに徹するのだ。

 しかし、2012年の大統領選挙では見返りを求めた。「われわれはあなたにサービスを与えた。われわれは今、あなたの支持を必要としている」と言って、モルシ氏に票を集めた。彼らはヨーロッパでもその経験を生かすだろう。

エジプト政府から見て、同胞団の問題点は何か。

 われわれは二つの宗教を持っている。イスラムとコプト(エジプトのキリスト教)だ。われわれは同じ顔で、お互い同じ言葉で話し、一緒に生活し、区別しなかった。

 しかし一度、同胞団がエジプトで政権を取ると、コプト教徒を区別し始めた。スンニ派のイスラム教徒とシーア派のイスラム教徒を区別し始めた。だから、何人かのシーア派教徒が殺害された。これは、エジプトだけでなく中東では非常に危険だ。

イスラム教が世界最大の宗教人口になりつつあり、穏健なイスラムよりも同胞団が権力を手にしたら、全世界をコントロールしようとするのではないか。

 私が思うに、過激主義は概して衰退する。アルカイダ、「イスラム国」(IS)も衰退する。同胞団も、自分たちは過激主義ではなく穏健派であると主張したとしても、エジプトの経験を見れば衰退する。同胞団がカムバックしたとしても、世界をコントロールするのは想像し難い。

(カイロ・鈴木眞吉)