米軍のアフガン駐留継続は当然だ
オバマ米大統領は、2016年末までに予定していたアフガニスタン駐留米軍の完全撤退を断念する方針を発表した。現在の規模を9800人のまま来年末まで維持し、オバマ大統領の任期が切れる17年1月以降も5500人を駐留させる新たな計画である。
攻勢強めるタリバン
アフガンのガニ大統領は声明で「アフガン軍の能力強化につながる。軍はテロに対し全力で反撃する」と歓迎した。オバマ大統領は撤退計画見直しの理由を「アフガン治安部隊はまだ(治安が担えるほど)強力ではない」と説明、治安状況次第ではさらなる見直しもあり得るとの見方を示した。
治安部隊は単独で任務を遂行できず、駐留米軍が頼みの綱であるという状況が、共通認識として確認されている。
アフガンでは昨年の大統領選後の混乱が長引き、選挙で争ったガニ大統領とアブドラ行政長官の2陣営は今も対立したままだ。政治空白を突くように反政府勢力タリバンが今春から攻勢を掛けた。9月末には一時的とはいえ、北部のクンドゥズを制圧した。情勢が不安定化していることは明らかだ。再び内戦に陥る可能性も否定できない。こうした状況下での米軍撤退は軍事的に意味がない。撤退断念は当然である。
国連などによると、タリバンの勢力拡大は01年以来最大となっており、アフガン全国34州のうちの約半分で脅威レベルが最悪だ。
さらに事態を複雑化させているのが過激派組織「イスラム国」(IS)の存在だ。アフガンにはISのメンバー2000~3000人が入り込んでおり、中央アジアから戦闘員が加わって3500人規模になっているとの指摘もある。
イラクでは、11年に米軍が完全撤退した後の「力の空白」に乗じてISが台頭し、国全体がずたずたにされた。現地の治安組織が力を付ける前に米軍が撤退してしまい、混乱を招いたイラクの二の舞いは避けたい。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、新たな計画について「米国の重大な貢献はわれわれの今後を検討する上で重要な要素だ」と歓迎する声明を発表。その上で「NATOの持続的な駐留に道を開く」ものだと述べた。アフガン軍の支援のために現在、現地に駐留させている1万2000人規模の部隊について、活動の期間や規模を含め、今後の重要な決定を下すことになる。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この新たな計画には、当初の計画の約1・5倍にあたる約146億㌦(約1兆7000億円)が毎年必要になる。
オバマ大統領は「私がした中で最も厳粛な決断だ。米軍最高司令官として、米国へのテロ攻撃を防ぐという国家安全保障上の利益にとってこの任務が不可欠だと信じている」と述べた。
中東安定に寄与する決断
米国にとっても国際戦闘部隊が必要であることが改めて認識された。オバマ大統領の決断は重要な意味を持つ。混乱する中東の安定に寄与する計画として支持したい。
(10月20日付社説)