「国民連合政府」、共産党の詭弁に惑わされるな
共産党の志位和夫委員長は安全保障関連法廃止を目指す「国民連合政府」の樹立を呼び掛け、同政府の下では日米安保条約と自衛隊を是認するとしている。だが、同党はいずれにも一貫して反対してきた。志位発言は「革命政党」共産党への懸念を払拭(ふっしょく)し、来夏の参院選で党勢拡大を狙う方便と見るしかない。
参院選で党勢拡大狙う
志位委員長は日本外国特派員協会での記者会見で、「国民連合政府」が実現した場合、日米安保条約廃棄は求めずに「現行の条約の枠内で対応する」と述べた。有事には在日米軍に出動を求める場合もあるとし、急迫不正の時に自衛隊を活用する考えも示した。
だが、これをもって共産党が日米安保条約と自衛隊を容認したと捉えるのは間違いだ。志位委員長によれば、「国民連合政府」は安倍政権打倒の「受け皿」で、安保法廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回の2点のみを実行する。「その時点で解散・総選挙を行い、その先の日本の進路については国民の審判を踏まえて選択すべきだ」(同記者会見)としている。
野党が参院選で過半数を得ても衆議院との「ねじれ国会」が生じるだけだ。「国民連合政府」は総選挙を経て実現するが、安保法廃止・閣議決定撤回はすぐに可能だから、超短期政権となる。その間、日米安保条約と自衛隊の現状維持は当然で、同党の政策変更でも何でもない。
志位委員長は「野党間に国政の基本問題での政策的一致が存在する場合には、本格的な野党連立政権をつくることが現実的な課題になる」とし、「現実にはそうした条件は存在しない」と述べている。
この認識に異論はない。共産党が従来の安保政策に固執する限り、同党を含む野党連立政権はあり得ない。だが、志位委員長は政策的一致の条件が存在しないとした。これは自ら政策転換しないと表明したに等しい。
「革命政党」の本質は不変ということだ。冷戦終焉後、「現実・柔軟路線」に転じたとし、2000年には党規約から「前衛政党」などの表現を削除、04年には党綱領を全面改定したが、中身は変わっていない。
共産党は1922年、「国際共産党(コミンテルン)日本支部」として発足した「革命政党」で、リンチ事件や火炎ビン闘争など数々の暴力事件を引き起こしてきた。志位委員長はこうした歴史を清算していない。
規約から「前衛」を削除し「日本の労働者階級の党であると同時に、日本国民の党」としたが、普通の政党であれば「日本国民の党」だけで十分だ。「労働者階級の党」を残したのはレーニン主義を堅持するためだろう。
04年綱領では相変わらず、「米国帝国主義」と「日本独占資本」の「二つの敵論」に立ち、民主主義革命後に社会主義革命を目指す2段階革命論を踏襲している。その際、敵の出方によっては暴力を使うとした故宮本顕治氏の「敵の出方論」を放棄していない。
非民主的な「革命政党」
共産党は民主主義と相容れない「革命政党」だ。他党は野党共闘の呼び掛けに安易に応じるべきでない。
(10月19日付社説)