イランの核兵器開発阻止へ監視怠るな


 米英など6カ国とイランが昨年交わした核協議合意に基づく「第1段階」の措置が開始された。核兵器開発疑惑払拭への一歩として歓迎したい。

 経済立て直しが狙い

 合意の内容は、イランが核開発を縮小する見返りに、欧米諸国が科してきた禁輸、資産凍結などの経済制裁を一部緩和するというものだ。しかし、イランに平和目的の核開発の権利を認めるかどうかや、建設中の重水炉の扱いなどの重要問題は先送りされた。

 国際原子力機関(IAEA)によると、イランはナタンツとフォルドゥの施設で濃縮度5%を超えるウランの生産を停止し、濃縮度20%のウランを希釈する作業を始めた。欧米は制裁緩和に着手し、国外での42億㌦の凍結解除が半年間にわたって段階的に実施される。また石油化学製品、貴金属、自動車に関する制裁も停止される。米政府は、制裁緩和による効果は約70億㌦に上ると予測している。

 イランが核開発縮小を受け入れたのは、制裁の緩和で国内経済を立て直す狙いがある。制裁の影響による通貨の下落、インフレなどで経済は疲弊している。さらに、核兵器開発疑惑で国際的孤立を深めているイランにとって、西側諸国との合意は、国際社会の中での威信を高めるためのチャンスでもある。

 保守穏健派で、欧米諸国との関係改善に前向きとされるロウハニ大統領は、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで演説し、「核合意の実行を通じ、欧州との関係は正常化する」と主張。合意履行をてこに国際社会からの孤立脱却を目指す考えを明確にした。

 だが、核兵器開発疑惑については「イランが核兵器を望んだことは決してなく、将来も望まない」と述べ、核開発はあくまで発電など平和目的との立場を説明した。

 ウラン濃縮に使う遠心分離機についても、大統領は解体の意思がないことをCNNとのインタビューで明らかにした。米政府は「解体」で合意したと主張しているのに対し、イランはこれを否定しており、核開発の権利とともに今後の協議の中で課題となるのは避けられない。

 岸田文雄外相はこのほど長崎市で行ったスピーチで、新たな核兵器国出現、核開発に利用される物資・技術の拡散、核テロの3項目の防止を主要課題とする「三つの阻止」を提唱した。この「新たな核兵器国」として北朝鮮とイランを挙げており、核・ミサイル開発に転用可能な物資・技術を獲得しつつあるとして警鐘を鳴らした。

 米国も上院情報特別委員会で公表した世界脅威評価年次報告で「イランは、自国の安全保障、威信、周辺地域への影響力を強化するために核開発を進めている。決定が下されれば核兵器を開発することは可能だ」と、イランの核開発能力に警戒心をあらわにしている。

 日本も協力を続けよ

 2月には米国で核協議が再開される見込みだが、国際社会はイランに核開発を放棄させるため、圧力、監視を継続していくべきだ。イランを新たな核兵器国にしないため日本も協力を怠ってはならない。

(2月1日付社説)