中国の原則的な対日請求権外交、韓国は個人補償支援し難関に
全世界で日本は西洋を除いて帝国主義を敢行した唯一の国だ。韓国と中国は最大の被害者だ。この日本に対して韓国と中国はどのように外交的に対したのか。
韓国は1965年、対日請求権協定を締結した。慰安婦問題は1993年、金泳三元大統領の時代に解決したが、「補償は願わない。その代わり日本は徹底した謝罪をすべきだ」ということだった。
中国は72年、日本に対して「戦争賠償請求権を行使しない」と明言した。そして、日本は莫大(ばくだい)な援助を政府開発援助(ODA)として中国に提供した。
このように解決した後、中国はこの原則を守って外交問題を起こしていない。だが韓国は徴用問題に対する「個人的」な追加補償を要求し、問題が新しく浮上した。大法院が賠償判決を下し、日本は輸出規制で応じ、事件は大きくなっていきつつある。さらに韓国は22日、韓日間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を決めた。
なぜ韓国だけで問題が大きくなっているのか。韓国と中国の差は個人的な追加補償にある。個人的賠償としてわれわれが日本から受け取る金額は日本の輸出規制で損害を被る金額に比べればごくわずかだ。数千倍または数万倍の差がありえる。なぜこういうゲームをわれわれはしているのか。
中国はどうか。もし中国で南京大虐殺、重慶無差別爆撃などについて個人的な追加補償問題が裁判所に提出されたとすればどうなったか。中国政府はそれを願わなかった。裁判所の決定で、政府が対処しにくい外交的問題を起こしたくなかった。だから戦争関連の対日補償問題を解決するという原則が守られたのだ。政府の統治権や司法府の司法制限の知恵のようなものが中国では発揮された。
しかし韓国は個人的補償問題を中国と違う次元で扱った。大法院の決定に反対する人を“親日派”と呼んでいることにも韓国政府の考えがよく現れている。政府が個人的補償に賛成なのか反対なのかに韓国と中国の差がある。政府が反対または問題があるという立場ならば、裁判所が三権分立理論だけで個人的補償を決めることは決して容易ではない。
韓国だけ個人的補償のために大法院が相手方の財産を差し押さえる手続きを踏んで、これを政府が支援している状況だ。中国は個人的請求権を国家が支援することの矛盾を知っていた。だから難題をつくらなかったのだ。前を見通す視野が中国外交にはあった。
われわれは国家の立場と個人の立場の間の矛盾を自らつくった。こうした懸案は外交的に限りなく複雑な問題なので、力で相手に勝つことができる場合以外は、解けない難題になってしまう。経済から始まって、安保問題まで拡大した今の韓日対立を解決しようとするなら、問題の本質を見なければならない。
(崔英鎮(チェヨンジン)元駐米大使、8月26日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
ポイント解説
政権交代で協定は反故?
戦後の対日補償問題をどう取り扱ったか。その違いで中国と韓国は明暗を分けている。こうした視点から、現在の韓国の対日アプローチの問題点を指摘できるのは、筆者の崔英鎮氏が外交官として世界的歴史的視野をもって日韓関係を眺められるからだ。このような冷静な記事が出てきたのを見ると、韓国内の若干の変化を感じる。
中国は補償を求めなかったことで、逆に膨大な政府開発援助(ODA)を得た。個人補償という厄介な問題を封印して、将来の難題の芽を摘んだ外交的な知恵があったのだ。
実は韓国も同じ対応をしている。請求権協定で個人補償を「一括」で処理した。なのに今になって問題が起こっているのはなぜか。答えは簡単だ。政権が交代したからだ。
中国は72年対日国交正常化した時の政府と現在の政府は同じく中国共産党である。変わりようがないのだ。しかし、韓国では対日正常化した時は「軍事政権」であったが、現在は「左派政権」となり、前の政権の歴史を裁き、書き直すことに狂奔している。当然、軍事政権の都合で結んだ条約や協定は否定されるべきものとなる。
しかし、この理屈から行けば、中国が将来民主化すると同じような問題が出てこないとも限らない。その時は国と国との条約は国内法に優先するという原則を守れるレベルの国になっていることを願うばかりだ。
(岩崎 哲)