崖っぷちに追い込まれた韓国
平和-自由+反日=「南北協調」なのか
x-y+z=平和-自由+反日=? 国の運命と直結した3元方程式だ。出題者は文在寅大統領。国民が答を提示できず出題者が正解を公開した。「南北協調」だ。
答えが正しいか知るためには、それぞれの変数に対する科学的な検証が先行すべきだ。まず出題者が定めたxの値“平和”の検証だ。就任後の2年を振り返ると、核とミサイルを両手に握った金正恩朝鮮労働党委員長の行動はさらに荒くなった。高射砲で人を殺す正恩氏の極悪には沈黙し、大統領はかえって「礼儀正しい」と褒め、一部では偉人とまで持ち上げる。今は敵に屈従して、安保を放置して亡国を自ら招来する偽平和の中にいる。
2番目の変数はyの値として示された“自由”だ。文政権の発足後、憲法と歴史教科書から自由を削除しようとする試みが何度もあった。自由は個人の人権が破壊された北の人民民主主義と区別する核心価値だ。自由を除けば南の民主主義は北の偽民主主義になってしまう。
最後のzの値“反日”には総選挙を狙った政略がうかがえる。強制動員判決に経済報復で応えた安倍政権の行動に憤慨しない国民はいないだろう。文政権と与党はその愛国心まで政略的に利用する。外交的解決より反日政局が来年の総選挙に肯定的だという内部報告書がその証左だ。
与党幹部らが反日を扇動した裏には、北朝鮮と民族協力を試みようとする計略が潜んでいる。「日本の経済侵略戦争に勝利しようとするなら、全民族が力を合わせなければならない」という与党のベテラン議員の発言で既に確認された事実だ。南北協調のために民族感情を燃え上がらせる。その焚き付けが反日ということだ。
大韓民国が進むべき道は国民の安全と国家繁栄を図る道だが、今われわれはその道を進んでいるのか。変数が間違って入力されれば、とんでもない結論が出るようになる。「南北経済協力で平和経済が実現されれば一気に日本の優位に追いつくことができる」という大統領の“南北協調”がそれだ。現難局の出口が米国でもなく北朝鮮との協調だった。これまで推進してきた平和と自由削除と反日が全て北に帰結されたのだ。
南北が力を合わせて、日本に勝とうというスローガンがどれほど虚(むな)しいかは即座に明らかになった。その翌日に北朝鮮はミサイル2発で応じたではないか。
李栗谷(朝鮮時代の儒学者)は壬辰倭乱(文禄の役)が起こる前、「朝鮮の状況は柱を変えれば垂木が落ち、屋根を直せば壁が崩れ、手をつけられない状況」と嘆いた。“安保の柱”と“経済の屋根”が根こそぎ動揺する昨今の情勢は、病気を患った朝鮮とどこが違うのか。
今年は臨時政府樹立百年を迎える年だ。15日は光復(解放)74周年だ。間違って設定された国家の座標が、百年を作ってきた奇跡の大韓民国を崖っぷちへ追い込んでいる。塔は積むことは難しくても崩れるのは一瞬だ。
(裵然國論説委員、8月13日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
ポイント解説
南北統一で日本に勝てる?
裵然國論説委員の憂国には同感する。「南北協調」は大切だろう。だが、金正恩委員長はトランプ米大統領がつぶやくように「いいやつ」だろうか。韓国にこれまでどんな仕打ちをしてきたか。また自国民を塗炭の苦しみに追いやり、自らはどこで調達したのか、高級車を乗り回し、ミサイル発射実験場を見て回る。
文在寅大統領も考えがあって、年若い暴君に付き合っているのだろうが、韓国民はじめ世界の人々には理解されない。そもそも北朝鮮は核開発をし周囲に脅威を振りまいて国連制裁を受けている。一時は米国の実力行使直前まで行ったのだ。「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」は未だに実現されていない。これを果たさせようというのが世界が国連で結んだ合意である。
北朝鮮を抱くのであれば、北が約束を果たし、国際社会が認める行動をとった時に初めて手を差し伸べるのが順序であって、少なくとも今ではない。
ましてや“瀬取り”などで裏から支援して延命の手助けをする国があるとすれば、それは国連制裁決議違反だ。
韓国内でさえ、「経済大国の西独でも東独を抱えるのは大変だったのに」と指摘されている。今のまま北と統一して「日本の優位に追いつく」というのがいかに「虚しい」スローガンか、論説委員の指摘は韓国のサイレントマジョリティーを代弁したものだ。
(岩崎 哲)