輸出規制強化に準備不足な韓国政府


韓国紙セゲイルボ

ひとまず日本の不満を聴取せよ

 日本の経済産業省は1日、「大韓民国に対する輸出管理運用改正について」という資料を出し、「TV、スマートフォン、半導体素材を韓国に輸出する際、規制を強化する」として、「輸出管理は国際法的信頼を土台に構築されるが、現在、韓日関係は信頼が著しく損なわれている」と背景を説明した。

文在寅大統領(左から2人目)

8日、ソウルの韓国大統領府で開いた会議で発言する文在寅大統領(左から2人目)(EPA時事)

 特に経産省は、「20カ国・地域(G20)首脳会議の前まで、強制徴用被害者問題に対して満足できる解決策を提示しないことも影響を及ぼした」と明らかにした。

 韓国政府の最初の対応は成允模(ソンユンモ)産業通商資源部長官の世界貿易機関(WTO)への提訴検討との発表だった。外交部や大統領府の反応は特になかった。

 翌2日の政府は静かだった。当日朝の閣議ですら日本の輸出禁止に対する内容はなかった。すべてのメディアは政府の黙殺無返答あるいは無関心に糾弾の声を上げた。

 3日朝に少しずつ政府の反応が出てきた。金尚祖(キムサンジョ)大統領府政策室長は、「日本の報復措置を予想して、事前にリストを作成したが、今回の措置はその1~3順位の品目だった」と“自慢ならざる自慢”を並べ、「政府が放置していたわけではなく、十分に予想したことであるだけに、よく対応していく」とも語った。

 そうするうちに4日から政府の論調が突然強硬になり始めた。洪楠基(ホンナムギ)副総理兼企画財政部長官はあるラジオ番組で、「日本の輸出規制は明白な経済報復で、政府としてはできる限り多様な対応措置を検討しており、日本に相応の措置を講じるだろう」とし、「WTO提訴を公式に検討する」と話した。成長官の発言から3日後に強対応策に転じたのだ。

 いま韓国と日本の衝突状況はどっちが勝つかの問題ではない。提訴手続きも長くかかり、勝つという保証もなく、勝っても実益は極めて少ない。問題の核心は直ちに被る韓国の被害を減らすことにある。それで両国間の対立、戦争拡大を警戒しなければならないのだ。

 ひとまず最高位級当局者を日本に送らなければならない。そして日本の不満、すなわち信頼回復案について深く聴取しなければならない。誰も韓国司法府の判決をひっくり返すことはできない。日本もそれをよく分かっているだろう。両国が互いに受容できる範囲内で一歩ずつ後退すれば静かに解決できる問題だ。

 政府は両国が折衷点を求めていく間に、被害を積極的に防がなければならない。金政策室長は十分に予想していたと言ったが、今まで出てきた政府の対応措置を見れば準備ができていたとは言い難い。

 何より、もし政府がリストを持っているなら、次に出てくる制限品目を国民に知らせ、早期警報を鳴らさなければならない。また、被害企業に対する具体的な支援要領、行動要領を発表しなければならない。そして中・長期的に日本への依存度を減らしていく方法を実行に移さなければならない。

 今回の問題は政府のせいであり、全てのものが政府にかかっている。

(申世敦(シンセドン)淑明女子大名誉教授、7月8日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

「最高位級当局者が深く聴取を」

 輸出規制問題に関する韓国メディア報道の中では、なかなかまともな論評である。韓国政府の対応のまずさを指摘し、まず被害拡大を防ぎ、日本側が何を主張し、求めているのかを見極めるべきで、そのためには「最高位級当局者」を日本に送り、日本側の主張を「深く聴取しなければならない」と申世敦名誉教授は訴えている。

 これこそが、いま韓国がやらなければならないことである。最高位級当局者とは長官(大臣)ないしは大統領府の秘書室長や首席補佐官クラスのことだ。「経済制裁だ」「WTO違反だ」「報復せよ」と勘違いなことを言わずに、日本政府が示す深刻な疑義が何かを聞き、韓国政府に“疚(やま)しいこと”がないかを虚心坦懐に省みることだ。

 文在寅政権スタート以降、戦略物資の対韓輸出量が増大した。だが、半導体の生産量は変わっていない。計算が合わないのだ。ウラン濃縮にも使われるフッ化水素はどこに使われているのか、韓国側に問い合わせても文在寅政府はまともな返答をよこさないできた。日本政府が韓国のホワイト国扱いを再検討し、戦略物資の輸出審査を厳しく行うのは当然のことである。

 この状態が続けば韓国は甚大な被害を被る。強がりやハッタリで乗り切れる問題ではない。今後こうした論評が増えていくだろう。

(岩崎 哲)