韓日外交悪化で趙外務第1次官に聞く
G20契機に多様な首脳間交流期待
趙顕(チョヒョン)外務第1次官は韓日外交の悪化と関連し、(早ければ)6月中に両国首脳が会談する余地があると表明した。趙次官はロシア訪問に先立つ10日、外交部庁舎でセゲイルボとインタビューを行い、韓日首脳会談開催の可能性について、「日本が関心を持たなければ容易ではない」と述べつつも、「6月に大阪で開かれるG20(20カ国・地域)首脳会議を契機に韓日首脳の会談など多様な首脳間交流があることを期待する」と語った。以下、(関連部分の)一問一答。
――韓日関係もなかなか解けない難題だ。
「前の政府で韓日関係が悪化し、2年半の間、両国首脳は国際会議で会っても無視してきた。それで外相会談などもできなかった。世論も悪くなって、米国も韓日関係に気を遣い始める。そのように追いつめられて、朴槿恵前大統領が慰安婦問題を妥結するように指示し、日本政府が金を出し、首相が謝罪するというので、全てうまくいったという雰囲気になった。言ってみれば“集団浅慮”の誤りを犯したのだ。
今の政府はツートラックが基調だ。過去の歴史は過去の歴史として対応し、両国関係は未来志向的に発展させていく」
――ツートラックは両方ともうまくいっていないという批判もある。
「韓日関係はそれ以上悪化してはならない片方の軸がある。韓日は(北核の)脅威を共有し、同盟(米国)も共有する。だがもう一方の軸、過去の歴史認識やこれによる両国間の情緒的反感は直ちに良くならないことも事実だ。韓日関係はこの間をうまく泳がなければならない。それがツートラックアプローチだ。そのようにしている。
いくら難しくても現政府は韓日外相会談を何度も行ってきた。私も次官になって日本に3度行った。日本の次官にも韓国に来るよう強く要請している」
――徴用工判決と関連し、日本が経済的な報復措置を行うという。状況は良くなりそうもないが。
「事実、慰安婦問題は日本がこれ以上強く問題提起しないことで合意しつつある状況だった。ところがそこに徴用工問題が起こった。この問題は実際、法的性格が強い。それなのに日本政府が初期に若干過剰な対応をした。国内の政治的要因もあったと見る。それで少し対立が高調した面があるが、これからよく説明して、解決方策をつくっていきたい。
緊張が高まる中でも両国国民の相互訪問は(昨年)1000万件を超えた。日本は青年層で人口の崖(急減期)を迎え、韓国では就職難が深刻だ。青年たちの日本就職拡大案を持って一昨年から日本を訪問した。それでつくられたのが韓国で3年勉強し1年は日本で学んだ後、そのまま就職する“3+1”制度だ。47大学が参加したが、もっと増やしていくべきだ」
――今年、首脳会談の可能性は。
「G20首脳会議が6月に大阪で開かれる。大統領が参加するはずだが、見守りたい。(年内の首脳会談は)検討している。時間をかけて考える必要がある」
(朴ジョンヒョン外交安保部長、4月16日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
ポイント解説
ようやく深刻さに気付く
韓国が最近の日韓関係の深刻さにようやく気付いたようだ。セゲイルボをはじめとして韓国メディアは文在寅政府の対日「戦略的放置」への危惧が日増しに強まり、最近では悲鳴にも似た論調が目立つようになってきた。
特に戦時朝鮮人労働者問題(いわゆる「徴用工問題」)の大法院(最高裁)判決が1965年の日韓基本条約体制を揺るがし、日韓関係を分断する超弩級の爆弾だったことを認めざるをえない状況だ。これを放置することがどれほど危険かを訴えて、文政権に行動を促す論調が日増しに強くなっている。
その一方で、左派“市民”団体らによる「徴用工像設置」など過激な対日侮辱行動を諌(いさ)める記事も目につくようになってきた。日韓関係を壊して損をするのは韓国であり、日本が本当に対韓経済制裁を発動すれば、韓国経済はひとたまりもなく、また北朝鮮の脅威に対抗するには日韓と米の協調が必要であることを強調するようになってきている。だが火を付けて回っている勢力の正体を暴かないことには解決の道は開かない。
外務次官へのインタビューを見ると相変わらず「ツートラック」などと都合のいいことを言っているが、既にメディアも国民もその詭弁(きべん)に気付いている。6月のG20を首脳会談の機会として期待を寄せているようだが、何の対案もなく会ったところで、実質「2分」で終わった先の米韓首脳会談の二の舞いに終わるだろう。
(岩崎 哲)