4者会談攻勢に出た金正恩委員長


韓国紙セゲイルボ

中国加え3対1の構図狙う

 金正恩朝鮮労働党委員長は新年の辞で、20年前の「1997年4者会談」カードをこっそりと持ち出した。「休戦協定の当事者との緊密な連携の下に、朝鮮半島の現休戦体制を平和体制に転換するための多者交渉も積極的に推進し、恒久的な平和保障の土台を実質的に整えなければならない」と主張した。

金正恩朝鮮労働党委員長

2019年を迎え「新年の辞」を発表する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=1日(朝鮮通信=時事)

 休戦協議の当事者とは結局、米国、北朝鮮および中国だ。韓国は北朝鮮のサポーターなので当然、参加対象だ。1997~99年、ジュネーブで6回にわたり行われた南北米中が参加する「4者会談」を復元させて、終戦宣言を引き出すカードを予告したのだ。

 4者会談は96年、金泳三大統領とクリントン米大統領の済州島会談で提案されたが、当時の会談は各国の同床異夢を確認しただけで、2年で幕を下ろした。

 朝米直接会談を優先し当初4者会談に消極的だった北朝鮮は渋々会談の場に現れ、在韓米軍撤退、韓米大規模軍事演習の中断および朝米当事者間での平和協定締結など、既存の主張を繰り返した。出席者らが破顔大笑するメディア用写真は何度も撮影したが、特別な解決法や成果を得られなかった。

 だが、2019年のソウル、平壌、ワシントン、北京の事情は1997年とは違う。シンガポールでの第1回朝米首脳会談以後、非核化は進展せず、対北制裁は維持されている。金委員長の立場では第2回会談を控えて、北東アジアにおける国際政治の土俵を揺さぶり、トランプ大統領の機先を制する合意形成システム構築の必要性を痛感。新年の辞で、「われわれの主動的な先制努力に、米国が信頼できる措置と相応の実践行動で応じるなら…」と砲門を開いたのだ。

 金委員長は本人主導で交渉局面が造成され、北朝鮮が主で、米国は従というわけだ。特に兄貴格の習近平主席の後援を受けた金委員長は、千軍万馬を得た思いだろう。先に米国の譲歩を促すことで米国の申告検証要求を断固として拒否し、むしろ制裁緩和と終戦宣言の貫徹に力を注ぐだろう。

 結局、北朝鮮は中国を朝米交渉に引き込んで、「南北中」対「米」という3対1の構図を形成する外交戦を展開しようとしており、既に北京で一歩を踏み出した。ベトナムのダナンに固まりつつある第2回朝米首脳会談を控えて、ボールはワシントン側のコートに投げ入れられた。

 メキシコ国境の壁予算問題で連邦政府の業務停止が3週間を超えた混乱した国内政治に忙殺されるトランプ大統領が果たして朝中首脳会談の意味と今年の北朝鮮の立体的な4者会談戦略を正しく看破しているのか疑問だ。今後、4者会談カードを持ち出した金委員長と非核化の手柄を誇りたいトランプ大統領の間で熾烈(しれつ)な攻防が繰り広げられるだろう。そんな中、韓国は行くべき道が見えているのだろうか。

(南成旭(ナムウンソク)高麗大行政大学院長、1月14日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。