新しい大統領の危機管理
ライオンの心臓とキツネの頭脳を
米国は1905年、桂・タフト協定を結んで、強大国の隙間で生存しようとする大韓帝国の命を日本の手に任せた。第2次世界大戦以後、戦後秩序を議論する過程で、韓国は強大国のおはじきにすぎなかった。米国はカイロ・ヤルタ会談で、韓国の独立の呼び掛けを無視して、テーブルの上で南北を分割する線を引いた。
米国は二つの顔で近づく。一つは西部劇のジョン・ウェインのような正しい保安官だ。韓国動乱の時、血を流しながら韓国を守った同盟の姿だ。また別の顔は危険千万だ。国際社会が守るゴールポストを自分勝手に移してしまう絶対的な国だ。
トランプ大統領就任以後、「米国は果たして韓国にとって何か」という疑問が韓国社会に広がっている。対北朝鮮先制打撃論で韓半島を揺さぶると、「サード(高高度防衛ミサイル)砲台の代価として10億㌦を出せ」と脅す。サード配備で国論が分裂し中国に経済報復されて困窮しているのにだ。韓国を無視する“コリアパッシング”、韓米自由貿易協定(FTA)を「ぞっとする協定」として一方的に「終了させる」とした。
彼の現実主義の判断基準からすれば、ある日突然、金正恩(キムジョンウン)を「立派な指導者」と褒めないとも限らない。すべてのことが不透明な局面に陥っている。韓国の運命が彼のツイッターで決定されてしまうと考えればぞっとする。
しかし、韓国の大統領選候補らはそうではない。「誰を尊敬するか」と聞くと、文在寅(ムンジェイン)・安哲秀(アンチョルス)候補2人とも世宗大王(セジョンデワン)だという。善政を施すという意思の表示だと思うが、厳重な時局にとても放漫だという思いを消せない。これではトランプどころか日本の安倍晋三、中国の習近平と正面折衝をやり遂げにくい。
安倍首相はトランプの前で、企みが無いようでいて、取りまとめることはみな取りまとめる。電話会談も6回行った。安倍首相が靖国神社を参拝しても、改憲を通じて軍事大国化の加速ペダルを踏んでも、トランプは容認するかもしれない。
習近平主席はトランプを唯一の超強大国指導者として優遇しながら、「韓国は中国の一部だった」と述べた。覇権的中華主義が跋扈(ばっこ)してもトランプは計算書だけ合えば目をつぶるだろう。
10日就任する新しい大統領は悲壮に初日を始めなければならない。トランプと安倍、習近平はマキャベリズムで武装している。われわれも徹底的に国益中心に行かなければならない。弱肉強食のジャングルでトランプが象ならば、安倍は狼、習近平は熊だ。よそ見をすれば踏まれてしまう。新大統領は新しいパラダイムに合わせて、ライオンの心臓とキツネの頭脳で危機管理を始めなければならない。
(ペク・ヨンチョル論説委員兼論説委員、5月5日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。