【韓国紙】地域感情扇動政治は消えるべきだ 国民を分裂させる亡国的行為
李在明(イジェミョン)「共に民主党」大統領候補が1月27日、全羅道光州での遊説で地域感情に火を付けた。李洛淵(イナギョン)常任顧問もワンチームとして同行する中で、「朴正煕(パクチョンヒ)が慶尚道だけに集中投資して、全羅道は疎外した」と、2世代60年も前の元大統領を召還したのだ。国民を分裂・離間させる亡国的政治扇動を行うのは、政界の一部に需要があるからだろうが、良識ある同地域の人々が共感するだろうか。
5・16(軍事クーデター)が起きた1961年当時、韓国は世界最貧国の一つだった。62年、朴正煕政権は第1次経済開発計画を始動する。赤貧の国家財政で経済開発は不可能であり、外国の借款導入が切実だった。
信じていたケネディ米政権からは借款どころか援助まで減らすとの圧力を受ける。天佑神助で西独の支援を受けることができた。韓国から鉱夫・看護師を西独に派遣したおかげだ。彼らが異国の土で流した血と汗と涙の代価である労賃を担保にして得た借款3億マルクが韓国経済開発の火種、呼び水になったのだ。
野党の金大中(キムデジュン)・金泳三(キムヨンサム)の反対は猛烈だったが、ついに70年7月、京釜高速道路が竣工した。なぜソウル~木浦でなくソウル~釜山間か。米国と日本に向かって開いている太平洋の関門は歴史・地理的に釜山にならざるを得ないではないか。
浦項製鉄所(現ポスコ)の創業も同じだ。京釜高速道路と釜山港を軸にした立地として、浦項の迎日湾が最適地だった。朴正煕の鉄鋼産業の分身・朴泰俊(パクテジュン)の、日本から請求権資金と製鉄技術協力を得るための涙ぐましい証言を、われわれは耳を傾けて聞かなければならない。
日本鉄鋼連盟と新日本製鉄(現、日本製鉄)の指導者らと政財界の義人たちの協力、サムソン会長・李秉喆(イビョンチョル)の産業報国精神と協力がポスコの奇跡を起こす大きな力になった。
筆者は晩年の朴泰俊会長に湖南冷遇論を聞くと、すぐに「赤貧の国家が経済を開発させてきた産業化の歴史を歪曲(わいきょく)して、政治的な私欲をむさぼろうとする亡国的政治扇動」という答えが返ってきた。
第2製鉄所の敷地選定当時、大統領の全斗煥(チョンドファン)が他の候補地を抑えて、湖南の関門である全南・光陽湾を最終指名した過程も注意深く見なければならない。安保と西海岸時代を見通した決断だった。
IMF危機(金融為替危機)の当時、朴泰俊は金大中の首相就任要請を受けて、国難克服のために全力を尽くした。そのどこに湖南疎外の跡があるのか。国家のため嶺南(慶尚道)の朴正煕の分身・朴泰俊が湖南の金大中を心から助けたのだ。
大韓民国の先進化のため、国民統合、地域和合、国論統一を訴えるべき大統領選にあって、地域感情を扇動する“分断遊説”で大統領になろうとする候補は審判の対象にほかならない。亡国的な地域感情を扇動する候補は大韓民国が分裂して衰亡することを願う者たちの拍手だけを受けることになるだろう。
(孫大旿(ソンデオ)前セゲイルボ会長、2月9日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
ポイント解説
「地域感情」持ち出した与党候補
韓国大統領選も佳境に入った。双方に決め手のない泥沼化した選挙戦で、最後は有権者の劣情に訴える“汚い戦い”になるのはどこも同じだが、禁じ手というものがある。韓国で言えば、地域感情だろう。
朴正熙大統領がライバルを蹴落とすために持ち出した古い地域対立だと言われていて、しばらく前までの大統領選ではこの対立構図でほぼ割り切れた。最近は地域代表的な候補でなく、理念や世代といった括(くく)りが強くなり、昔の嶺南対湖南構造は背面に入り込んでいたと思われていた。
だが、ついにこの手を繰り出してきた。相当に李在明陣営は苦しいのか。しかも、この場には湖南出身の李洛淵前首相もいたのだ。嶺南出身の李在明氏の横で李洛淵氏はこの扇動をどう聞いたのだろうか。
孫元会長は朴大統領が嶺南から経済建設に取り掛かった事情、湖南を冷遇したわけではなかったことを強調している。国の発展に取り組んだ当時の政治家たちの、立場を超えた協力・努力があったことを忘れてはならないし、取り組みにはどうしても順番があるものだと諭している。
“漢江の奇跡”はその多くは日韓請求権協定資金が“原肥”となったが、孫氏はドイツの借款の説明に多くを費やした。日本側も知っておくべき情報だ。
もちろん、「日本鉄鋼連盟と新日本製鉄の指導者ら」の協力にも言及している。朴泰俊氏は稲山嘉寛新日鉄会長の下で寝食を共にし、稲山会長ら当時の関係者は製鉄所立ち上げに心血を注いだ。その絆を知る世代が、日韓双方でいなくなっていくのも寂しい限りだ。
過去の政治家が分裂を扇動したわけでもなく、日本やドイツの協力があって発展していった歴史も忘れてはならないとする孫元会長の「一喝」をセゲイルボをはじめ韓国メディアはどう聞くだろうか。
(岩崎 哲)