“偽証教唆”論議膨らむ真実和解委 軍・警察を加害者に誘導か
「真実和解のための過去史整理委員会(2期真和委)」が深刻な論議に包まれている。「加害者特定が難しい場合、国軍、警察などと記入しても構わない」と申請者たちに説明してきたことが、遅まきながら国会の国政監査で露呈したからだ。
2期真和委が同委サイトに問題の案内文をアップした今年4月末から削除した10月まで、少なくとも5カ月間に受理した真実糾明申請は約4800件。韓国の軍や警察などを加害者と分類した「民間人集団犠牲事件」が大多数だ。
昨年12月から今年9月まで真和委が受理した申請は約1万件。そのうち民間人集団犠牲事件は65%の6419件で、北朝鮮軍など「敵対勢力関連事件」1331件の5倍だ。
朝鮮戦争期、北朝鮮軍とその同調者など「敵対勢力」による被害の糾明は疎(おろそ)かにしながら、韓国軍・警察などの過ちがより大きいと浮き彫りにしようとしたのではないかという疑問も大きくなっている。
朝鮮戦争期の民間人虐殺のように加害者を特定しにくい場合もある。それで国連の人権関係機関はそうした場合に軍、警察、民兵隊、情報機関など加害者と考えられる機関や団体を示して、その理由と加害者の制服、階級などを詳細に記載するよう案内している。
関係者の証言や記録を調査し加害者を判断するのが真和委の役割だが、これでは被害認定申請の段階で偽証を教唆したことになる。
真和委で韓国軍・警察の虐殺被害と判明した後、国家を相手に訴訟を起こせば、消滅時効の例外が認められ賠償を受けることができる。半面、北朝鮮軍などによる虐殺被害は北朝鮮の裁判所で北政府相手に賠償を請求することもできず、韓国の裁判所で北朝鮮政府を相手に勝訴したとしても、これを執行することは難しい。
それで民間人虐殺事件で加害者を韓国軍・警察だとすれば、賠償金1億5000万ウォンを受けることができ、北朝鮮軍だとすれば一銭も受けることができないのが現実だ。従って真和委の案内文は、被害者に民間人虐殺事件の加害者として韓国軍・警察を指定しろとの指針だとも読める。
こうした論議が広がると、委員会は問題の案内文をホームページから削除。また、公式的に釈明はせず、経緯を取材するメディアには「実務者のミス」だと一蹴しようとするので、疑惑だけが膨らむ。結局、人権団体が鄭根埴(チョングンシク)真和委委員長を職権乱用と詐欺教唆の容疑で検察に告発するに至った。
真和委は今からでも問題の案内文がアップされることになった背景を自主的に調査し、責任を問うて、国連人権機関などで使うガイドラインを参照し、国際基準に合致する新しい案内文を掲示し、実務でこれを遵守(じゅんしゅ)すべきだ。
(イ・ヨンファン転換期正義ワーキンググループ代表、11月12日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
ポイント解説
何でもかんでも軍か警察のせい
「証明が難しいなら、韓国軍か警察のせいにしてしまえ」「その方が賠償金をとれるから」「北朝鮮軍にやられたといっても、一銭も取れないぞ」
要するに、こういうことだ。韓国動乱などの時、戦渦や騒乱に巻き込まれて命を落とした人々が数多くいる。彼らの死は運の悪い事故だったのか、意図的な殺戮(さつりく)行為に遭ってしまったのか、加害者は韓国軍や警察だったのか、それとも北朝鮮軍だったのか。不慮の死を遂げた人々の無念を晴らすべき「過去史の真実」を究明する委員会が、でたらめの申請受付をそそのかしてきた、という話である。
こうして歴史はぞんざいに扱われ、捏造(ねつぞう)されていくのが韓国の歴史に対する態度なのだろうか。歴史と言っても韓国では一本の単純な時間の流れではない。国家成立後すぐに同民族相争う戦争が起き、共産主義と対峙(たいじ)する軍事政権が強権政治を敷き、内乱状態も経験し、過酷な民主化運動弾圧もあった。その過程で、確かに国家権力の暴力によって無念の死を遂げた人々もいる。その無念を晴らし、名誉を回復させようと言うのが真和委の役割だ。
ところが、戦争や混乱の中で起こった事件である。調査は難しいものばかり。そこで一緒くたに軍や警察のせいにしてしまおうとしたのだろう。そうだとすれば怠慢と言わざるを得ない。こんな雑な調査では亡くなった人の無念は晴らせない。
一方、怠慢と言って済まされない側面もある。真和委は左派政権の登場と共に設置されたことから、それまでさんざん軍事政権や公安警察から追及されてきた左派活動家の“リベンジ”にも見える。積弊清算と同じ脈絡のものだ。
その清算に真実性を持たせようとするなら、安易な「軍か警察にしておけ」という態度では疑念を膨らませるだけだ。それでは本当の犠牲者たちは浮かばれない。
(岩崎 哲)