【韓国紙】規模でなく文化の発信が重要


韓国紙セゲイルボ

米メトロポリタン美術館の韓国展示室

米ニューヨークでの国連総会出席後、22日にハワイ州ホノルルを訪れた韓国の文在寅大統領(EPA時事)

米ニューヨークでの国連総会出席後、22日にハワイ州ホノルルを訪れた韓国の文在寅大統領(EPA時事)

 米ニューヨークのメトロポリタン美術館の2階北東側に向かって「アジア美術」セクションがある。まず、中国陶磁器と仏像、仏教美術品などが展示され、「隠遁と交感の中国美術」と題する特別展示も進行中だ。中国室だけで15室に近い。
 日本展示室も10室余りに達する。「日本、スタイルの歴史」という題名の特別展示には古代から現代まで特徴的な彫刻像と陶磁器、絵画などが展示中だ。

 インド・パキスタンなど南アジア美術品展示室が6、7室。また、ミャンマー・タイ・カンボジア・ベトナムなど東南アジア美術品展示室が5、6室ある。

 韓国展示室は中国仏教美術室の間にやっと一つあるだけだ。約50坪、それ自体も不満だが、中国や日本の展示室と比べると、失望感が並大抵ではない。規模も小さく、あまりに素っ気ないという印象を消すことはできない。訪問した韓国人が「みすぼらしい」「残念だ」という理由も頷ける。

 国連総会でニューヨークを訪問した文在寅(ムンジェイン)大統領夫人・金正淑(キムジョンスク)女史が20日、防弾少年団(BTS)、黄熙(ファンヒ)文化体育観光部長官(閣僚)と共にメトロポリタン美術館を訪問した。韓国室を訪れた金女史は、「韓国室が韓国と韓国の美を世界の人に伝える意味深い空間になることを願う」と語った。

 黄長官はその後の特派員懇談会で、「メトロポリタン美術館の韓国室の規模拡大を進める」と明らかにした。美術館側が現在よりも広い空間を韓国政府に提示したという内容も付け加えた。うれしい知らせだが後味はすっきりしない。

 2018年基準で海外の博物館に設置された韓国室は23カ国68カ所。その半分近くが米国にある。今回、拡張推進を発表したメトロポリタン美術館の韓国室は文化体育部の「海外博物館韓国室運営支援事業」対象のうち「拠点館」であり「優先支援館」だ。それがこの程度とすれば、海外の他の博物館の韓国室はどの程度の水準であるかは自ずと知れる。

 米ワシントンのスミソニアン国立自然博物館の韓国室が17年に閉館した。当時、閉館に対して政府の対応が消極的だったという指摘が少なかった。今回の韓国室拡張推進発表もやはり実際推進されるまでどれくらい長い時間がかかるのか予想しにくい。

 また、18年基準で国外の韓国文化財は20カ国に17万2316点と把握されているが、それも“氷山の一角”という指摘があった。海外機関や所蔵者らが韓国文化財を持っていながらもそれを韓国のものとは知らずに中国や日本の物と分類したり、収蔵庫に放置されたままであることが多いという指摘もある。

 展示室の面積を広げることが重要なのではない。海外にある文化財を調査・研究して把握し、保存し、またきちんとした展示を通して韓国文化を発信することが核心だ。海外の韓国文化財の保存と展示事業が大統領夫人の訪問を契機にした単発のイベントで終わってはならない。

(朴永濬(パクヨンジュン)ワシントン特派員、9月27日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

広さよりも質の充実を図るには

 山梨県北斗市高根に「浅川伯教(のりたか)・巧兄弟資料館」がある。浅川兄弟は戦前の朝鮮で青磁、白磁、民芸品の価値に光を当て、全土の窯跡を探査し、調査保護に努めた韓国美術の発掘者である。柳宗悦が朝鮮の美を認識するのに大きな影響を与えた。
 韓国で浅川兄弟は尊敬を受け、弟の巧は韓国の墓地に埋葬され、戦後の戦争や混乱、反日の中で現地の人々に守られてきたほど、韓国人に愛された。それは彼が朝鮮の美や日常使う陶磁器や家具などの民芸品の価値を見いだし、愛(め)でたからだ。

 それまで朝鮮人は自分たちが使っている陶磁器や民具などに価値があるとは考えていなかった。だから、保存し体系付け意義付けして、美術品として保管しようとは露ほども思わなかったのだ。

 「その価値を日本人が見いだした」とは言わない。それはあまりに傲慢(ごうまん)だ。朝鮮の人々の中にも価値を認める者はいたが、それらは日常だったし、消費される物品で、朝廷の宝物殿に収まるようなものではなかっただけの話である。

 海外の博物館・美術館で韓国ものが冷遇されている、軽視されているという。そう嘆く前に、まず自らがその価値に気付き、認め、体系付け、保存し、守っていなかったことを省みるべきだろう。

 メトロポリタンが韓国室を拡充しようという時、学芸員が参考にする朝鮮美術に関する研究書があるのかどうかも課題だ。国外の学者・研究者がまとめた資料に頼るようなことがあれば、それこそ文化国家・韓国の名折れだ。

 他所と比べて狭い、小さいと比較するのは中身よりも見栄を優先する民族性に由来する。スペースの拡大で逆に中身が薄くならいように願う。

(岩崎 哲)