米中間で立場の選択迫られる韓国


韓国紙セゲイルボ

“均衡外交”の綱渡りは限界に

 バイデン米政権のインド太平洋戦略が輪郭を現しつつある。12日、米国・日本・オーストラリア・インド4カ国安保協議体“クアッド”テレビ首脳会議は共同声明で民主的価値を強調しつつ「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを提示した。

17日、韓国・ソウル南方の烏山空軍基地に到着したブリンケン米国務長官(右)(AFP時事)

17日、韓国・ソウル南方の烏山空軍基地に到着したブリンケン米国務長官(右)(AFP時事)

 15日からブリンケン米国務長官とオースチン国防長官が日本と韓国を歴訪する。ブリンケン長官は18日、米アラスカ州アンカレジに移動して、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と共に中国の外交トップである楊潔篪共産党政治局員、王毅外相に会う。バイデン政権発足後、韓日中との初めての高官対面協議が相次いで行われる。

 韓国政府は選択の瞬間に直面している。米国と中国の間で“均衡外交”を名分とした綱渡りをこれ以上続けられなくなった。米国が同盟を強調しつつ「クアッドプラス」への参加など、対中牽制(けんせい)参加を要求するのに対して、韓国の立場を明らかにしなければならない時が到来したのだ。韓国外交にとり重大な時期に他ならない。

 18日に開かれる韓米外交・国防長官(2+2)会議に対する準備を徹底的にしなければならない。米国が国際秩序の枠組みを新しくする中で、韓国の立場を再定立することが優先課題だ。新国際秩序がどんな姿に変わるのかを敏感に把握して、綿密に分析しなければならない。

 最も重要なのは北朝鮮の核問題への対応を調整することだ。バイデン政権が民主的価値や人権を前面に出すことに留意しなければならない。北朝鮮の核、人権などをめぐる韓米間の認識の差を縮めて、バイデン政権が早ければ来月に発表する新対北政策の基調に韓国の立場を最大限反映しなければならない。そうしてこそ両国の協力空間を広げることができる。米国が韓米日安保協力を重視することを勘案して、冷え込んだ韓日関係の解決策を探ることも核心課題だ。

 このような複雑に絡みあった外交課題を扱う方法をまず整備しなければならない。政府の各部処(省庁に相当)が違う声が出るのでは困る。核心的な外交懸案に対しては、まずわれわれの位置付けと目指す方向に関する原則を立て直し、細部懸案別に模範答案を入れたマニュアルを作って、各部処が共有する方法を模索する必要がある。

 国益を守って行こうとするなら、必ず原則と政策基調を共有しなければならない。政府が外交政策に関する一貫したメッセージを出してこそ、国民の支持を引き出すことができる。今こそ外交の基本が揺らいではならない。外交部(外務省)が自らの役割を果たさなければならない時だ。

 バイデン政権誕生への根拠のない期待感を捨てて、冷厳な現実を直視しなければならない。政府は米国の新しい国際秩序の探索を、多者外交と価値外交の空間を確保する機会にしなければならないだろう。

(朴完奎(パクワンギュ)論説室長、3月16日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

北京遥拝の文氏が迎える米使節

 申し訳ないが、中身のない論説である。米国で新政権が誕生してから何カ月が経(た)っただろうか。米外相・国防相の訪問は目前に迫っている。今まで韓国政府はバイデン政権の新外交政策を探ってきたはずではなかったか。

 今になって部処(省庁)間の調整をし「模範解答」「マニュアル」を準備しようとは素人にもほどがある。入試前日に一夜漬けをしても間に合わないという話だ。メディアがそれを政府に求める論説を載せているということは、韓国政府にはその準備がなさそうだ、と読むしかない。

 そもそも文在寅政権に今まで「外交」があったのだろうか。米中の間で腰のすわった主張を出してきたのだろうか。クアッドに加わり「自由で開かれたインド太平洋」と声を合わせる覚悟はあるのだろうか。国家間の約束を反故にし、いたずらに対立と行き詰まりをもたらしたにすぎず、米国から求められるであろう対日関係改善の「策」を出せたのだろうか。本気で民主主義と自由主義経済の側に残ろうと考えているのだろうか。

 文大統領には驚かされる。中国・韓国では旧正月を祝うが、文大統領は過去に中国国営中央TVを通じて中国語で北京に挨拶(あいさつ)を送っていた。今年は大統領だけでなく、閣僚や首長らが居並んでいた。その光景を見て下関条約(1895年)は「もはや無効」になったのかと目を疑ったほどだ。「望闕礼(ぼうけつれい)」を復活させ、北京「遥拝」を行う文大統領を米国や日本がどう見詰めているか、メディアはそれをこそ指摘すべきだ。

(岩崎 哲)