国民的話題は「国家針路の大転換」
今年が選択の決定的機会に
昨年は脳裏から完全に消したい程ぞっとする年であった。新型コロナのためだけではない。4年近く三権分立を無視する超憲法的発想の国政運営が続き、民生の破綻と国家基盤の弱体化を招いた。
運動圏政権(在野の活動家出身者が中核を占める政権)の限界が露呈し、これ以上期待することができない今、話題とするべきは「国家針路の大転換」だ。
改革を標榜(ひょうぼう)した文在寅政権の下で民主主義は定着し、経済は活力を取り戻し、社会は正しく、韓半島は平和が定着すると期待した。しかし最低賃金引き上げ、雇用創出、週52時間勤務制、南北関係など、どれも成功せず、副作用だけが深刻だった。今日の韓国が彼がつくると公言してきた「一度も経験したことのない国」なのか。
コロナ危機に乗じて昨年4月の総選挙で圧勝し、独善と独走を加速させた。最悪のコロナ危機と民生破綻においても、彼らの関心は「検察改革」だったが、それは政権の不正を捜査する検察総長(検事総長)追い出しと検察掌握のための名分にすぎなかった。民主主義を後退させているとの非難にもかかわらず、文大統領は「韓国民主主義の新しい章が開かれる歴史的時間」と語った。
さらに政府与党は5・18(民主化運動=光州事件)歪曲(わいきょく)処罰法、対北朝鮮ビラ禁止法、企業規制3法、労働組合法改正など、反民主・反市場的な法律を押し通した。経済危機を克服するとして、韓国版ニューディールの名分で天文学的規模の資金を注ぎ込んだが、経済は悪化の一途で、莫大な国家借金だけを後世に押し付けている。
自画自賛を繰り返してきたK防疫もコロナ第3波を迎えて病床、医療スタッフ、ワクチン確保などでその虚像が露呈した。世界の約40カ国がワクチン接種でコロナのトンネルから抜け出しつつあるが、韓国は秋になっても集団免疫ができるのか疑問だ。
運動圏路線の国政運営が5~10年続けば、将来が絶望的にならざるを得ない。政治が正しく立ってこそ国が生きる。4月にはソウル・釜山市長補欠選挙があり、続けて大統領選挙戦が本格化する。したがって今年は運動圏政権の無能な国家運営を続けるのか、でなければ、国政運営を正常軌道に戻すのか、を選択する決定的機会となる。
韓国が再跳躍するには、失敗を繰り返してきた時代錯誤的理念路線から抜け出して実用路線に復帰することだ。しかし一つの国の歴史的転換は自然には来ない。過去の選挙で誤って選択したことに対する私たち全ての骨身にしみる覚醒がなければならず、また、国を必ず正しく立て直すというビジョンと決死的な意思を持った政治勢力が導かなければならない。
今年もそういう歴史的転機を作り出せなければ、私たちは永らく絶望と暗黒の中でさ迷うことになるかもしれない。
(金忠男(キムチュンナム)前外交安保研究院教授、1月18日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
ポイント解説
最終評価に入り始めた文政権
真正面から文在寅政権に「NO」を突きつけた論説である。任期を1年数カ月残して文政権の総括に入ってきたようだ。「国らしい国をつくる」という彼に期待を寄せたものの、左派学生運動出身者による「運動圏政権」がやったことは「時代錯誤的理念路線」の数々で、「民生破綻と国家基盤の弱体化を招いた」と金忠男教授は断罪する。
この政権を選んだのは韓国有権者である。だからこそ、それを改めるのも韓国民の責務で、今年は左派政権を続けるのか「国政運営を正常軌道に戻すのか」を選ぶ重要な機会となる、というわけだ。
大統領選の前哨戦と位置付けられているのが4月のソウル・釜山の市長補選だ。まずそこで韓国有権者が「骨身にしみる覚醒」ができたのかが試される。両市長はともに「セクハラ」で席を追われた与党“進歩系”の、しかも一人は有力な大統領候補とも目されていた人物だった。
セクハラは韓国学生運動の負の体質であるとある月刊誌が指摘しているが、「運動圏」が絶対無謬の指導権力を持ったために、時には「性奉仕」を当然視することもあったという。同じく学生運動出身で大統領候補に擬せられていた忠清南道知事も女性秘書に長年「性奉仕」をさせていたことが告発され、席を降りた。
性道徳こそ、左派保守の別なく指導者が最も戒めなければならないものだが、立て続けに首長、それも左派学生運動出身の有力者が追及されたことは、「時代錯誤的理念路線」云々(うんぬん)の前に厳に問われるべきものだろう。まずは市長補選が注目される。
(岩崎 哲)