“嫌韓”と“嫌日”誘発する報道は自制を


韓国紙セゲイルボ

両国首脳が対話継続の意思

 先月、東京のあるレストランで昼食をしている時、テレビを見るとずっと韓国関連のニュースをやっていた。この日、曺国前法相夫人のチョン・ギョンシム東洋大教授が令状実質審査を受けるためにソウル地裁に出頭した。

安倍晋三首相(中央左)と文在寅大統領

4日、タイの首都バンコク近郊で、個別に対話する安倍晋三首相(中央左)と韓国の文在寅大統領(中央右)(AFP時事)

 韓国ではフォトライン(検察や裁判所の前に引かれた白い線、取材競争による混乱を避けるため出頭者がここで立ち止まる慣例がある)に立つチョン教授をモザイク処理するかどうかでさまざまな主張が飛び交ていた時だ。チョン教授が公人かどうかをめぐって意見が分かれ、多数のテレビや新聞では顔をモザイク処理して報道した。

 ところが、同じ時間に日本のある民間テレビ局ではチョン教授の顔がそのまま報道された。この他にも曺前長官一家、文在寅大統領、訪日中だった李洛淵国務総理の関連報道が絶えず流されているのを見て、自分が韓国にいるのか日本に来たのか、分からなくなったほどだ。

 特に曺前長官一家の疑惑に関する報道は国際政治とは異なる問題なのに、日本のメディアはひっきりなしに扱っている。日本に長く住む在日韓国人に尋ねると、「北朝鮮関連報道が多かったが、最近は韓日関係が悪化して、韓国に否定的な報道が溢(あふ)れている」と舌打ちした。一部のネット放送で“嫌韓”を唆す過激コンテンツがあると聞いたが、テレビでも否定的な印象を植え付ける報道が予想以上に頻繁に扱われているのを見て少なからず驚いた。

 これで済まなかった。メディアで韓国ニュースをどれほど多く扱っているかは、一部の日本人大学生は検察改革などをめぐる進歩・保守陣営の街頭集会にも関心を見せたことでも分かる。李総理が慶応大で学生たちと懇談会を行った時、ある女子学生が、「ソウルでは多様な観点の大規模集会があるというが、韓国の方々の関心事は何か」という質問まで登場するほどであった。

 昨年10月、大法院の日帝強制動員被害者賠償判決と安倍政府の半導体素材3品目に対する韓国輸出規制措置以後、韓日両国の対立は極に達している。外交摩擦が不買運動にまで広がり、両国の民間レベルでも対立が続いている。

 両国の対立は早期に解決できない外交当局の無能が最も深刻な問題だが、大衆に悪い印象を植え付けたメディアの責任もなくはない。ひょっとして自分が書いた記事の中に読者に“嫌日”を煽(あお)るものはなかったか振り返ったりもした。

 韓国と日本は1500年の友好協力の歴史を持つ隣国だ。メディアの立場では“是々非々”を論じるべきで、嫌悪を助長するような扇動報道は止めなければならない。いくら視聴率が上がり、オンライン上でアクセスが増えるからといって、度を越えたニュースはお互いに百害無益だ。

 文大統領と安倍首相が会って対立を解き対話を継続するという意思が出てきただけに、“嫌韓”と“嫌日”を誘発する記事の量産は自制しなければならない。

(崔ヒョンチャン政治部記者、11月9日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

評価本と批判本が並ぶ書店

 日本と韓国の“嫌○”記事を比較すれば、圧倒的に日本の方が多い。意外に思われるだろうが、報道に関しては最近の昼のワイドショーでも毎日韓国モノが出る日本と比べて、韓国はそこまではない。
 韓国民の関心はもっぱら国政や経済など国内問題に注がれている。国際問題といえばトランプ米大統領の盛大な「安保請求」か中国からのPM2・5ぐらいのもの。「徴用工」「輸出素材」など日本関連のニュースも他地域のニュース量に比べれば当然多いが、それが即“嫌日”というわけではない。もちろん、否定的な話題だから、自然と批判的なトーンにならざるを得ないが。

 韓国では日本を取り上げるパターンが二つある。先進的な産業技術や文化が紹介される一方で、安倍首相の発言一つ一つに警戒感をあらわにする。対日政治・防衛懸案はほぼ全て反射的に日本批判になる。したがって書店では日本評価本と批判本が並ぶ。

 一方、日本は最近になって“嫌韓”が出版の一つのジャンルになった。書店で嫌韓コーナーが成立するほどに。根底には商業主義がある。要するに売れるコンテンツなのだ。それが溢(あふ)れた結果、最近韓国に関心を持った層は“嫌韓”にならざるを得ない。ほとんどが批判本なのだから。

 日本人には「本音と建前がある」と韓国人は批判するが、韓国人の「建前の反日、本音の親日」、日本人の「建前の日韓友好、本音の嫌韓」というのが現住所かもしれない。

(岩崎 哲)