英EU離脱、背景に反難民感情
テロ拡大、イスラム化に警戒感
イスラム過激思想に感化されたテロが後を絶たない。米フロリダ州オーランドでの銃乱射事件では容疑者を含む50人が死亡、米史上最悪の銃撃事件となった。難民・移民に悩む欧米では、現地の文化になじもうとしないイスラム教徒排斥の動きが急拡大、ついに英国民は、イスラムに甘く、難民・移民の受け入れを求める欧州連合(EU)を離脱することを選択した。背景の一つに、欧州でのテロやイスラム化が英国に拡大することへの警戒感があるものとみられる。(カイロ・鈴木眞吉)
オーランドの銃撃事件、米国の移民2世らが聖戦要員の供給元に
オーランド銃撃事件の犯人、オマル・マティーンは、ニューヨーク生まれのアフガニスタン系米国人で、過激組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓っていた。2011年と12年に、イスラム教の聖地メッカに巡礼した真正のイスラム教徒。ISは、「カリフの国の兵士の1人が、十字軍が集うナイトクラブで攻撃を実行した」との声明を発表した。国内で育った移民系の若者が他国の過激思想に染まり、自国内の標的を対象にテロを起こす「ホームグロウン(国産)テロ」とも見なされた。米国の移民2世らが、急進的な聖戦要員の格好の供給元になっているとの指摘もある。
英国民のEU離脱の選択は、さらに大きな衝撃を全世界に与えた。英国の主体性を求めることも要因だが、イスラム教徒がロンドン市長になるなど、イスラム教が英国内にじわりと浸透することへの危機感に加え、難民・移民を通じてテロが増大し、さらにイスラム化が加速することへの言い知れぬ不安と焦りが、離脱を決断させる要因の一つになったことは否めない。
イスラム教徒の入国の一時的な禁止を求めたトランプ氏が、米次期大統領共和党候補に押し上げられた背景も、難民・移民のさらなる流入により、米でテロが頻発、イスラム化がますます進むことへの不安や焦りが背後にある。
欧米諸国にはこのように、自分たちの今までの良き生活や文化、伝統が、イスラム教徒の増大によって踏みにじられ、失われようとしていることに直面、イスラムに対する不満が増大している。
政治家に解決を求めると、票欲しさや、死刑宣告が下されることを恐れてイスラム批判を引っ込め、反対にイスラムを擁護する姿勢に徹する。
しかし、テロを正当化し、暴力をそそのかす章句はコーランの中に枚挙にいとまがない。悔悟章(9章)5節には、「聖月が過ぎたならば、多神教徒を見つけ次第殺し、またはこれを捕虜にし、拘禁し、また凡ての計略を準備して、これらを待ちぶせよ」とあり、ムハンマド章(47章)4節には、「あなた方が不信心な者と戦場で見える時は、彼らの首を打ち切れ。彼らの多くを殺すまで戦い、捕虜には縄をしっかりかけなさい」とある。
イスラム教における刑罰規定には、ハッド刑と同害報復刑(キサース)、裁量刑(タァズィール)の3種類があるが、現代、殊に問題視されている刑はハッド刑で、コーランに定められた“神の法”故に、刑罰の内容を永遠に変えることを許されない固定刑だ。①姦通②姦通の中傷③飲酒④窃盗⑤追い剥ぎ罪の5種類の罪に科せられる罰則で、姦通には既婚者には死に至るまでの石打刑。未婚なら鞭打ち100回。姦通の中傷罪には鞭打ち80回、飲酒罪には鞭打ち80回または40回、窃盗罪には手足交互切断、追い剥ぎ(強盗)罪には、強盗殺人の場合は死刑の後、磔、強盗の場合は手足切断の刑が科せられる。
ただし19世紀以降、イスラム諸国の大半で近代的な刑法が導入されたことから、ハッド刑実施国は、サウジアラビアとイラン、スーダン、パキスタン、アフガニスタンぐらいになったが、ISなどイスラム過激派はコーランの言葉をそのごとく適用、世界各地で蛮行を繰り広げている。
テロや蛮行は間違いなくイスラム的考え方、すなわちコーランやイスラム法、聖戦思想、女性蔑視などから来ており、テロの責任は,イスラム教そのものにあると思えるのだが、それをイスラム教徒やイスラム指導者にぶつけても、「イスラム過激派の連中はイスラム教徒ではない」「イスラム教とテロは関係がない」などとはぐらかされ、イスラム教徒の誰一人として、テロに対して責任を持たない。責任逃れに徹することは事態を悪化させるだけで、事態打開にはつながらない。