中国国防白書、国際秩序破壊を正当化するな


 中国政府は「新時代の中国の国防」と題する国防白書を発表した。

 白書は中国の国防政策が「防御的」だとしているが、とてもそのようには受け取れない。中国の覇権主義的な動きは地域の不安定化を招くだけだ。

台湾への強硬姿勢鮮明に

 白書は、トランプ米政権に対抗する強硬な姿勢を示し、2015年の前回白書に比べ米国批判のトーンを強めている。米国に対して「アジア太平洋への干渉を強め、地域の戦略的均衡を壊している」と非難した。

 習政権は中国軍を今世紀半ばまでに米軍に対抗する「世界一流の軍隊」とする目標を掲げている。白書では、来年までに軍隊の情報化能力などを大幅に強化し、35年には軍隊の現代化を実現すると表明した。

 地域紛争時に米国の介入を阻止する狙いがあろう。白書は、米軍事拠点のあるグアムを射程に収める中距離弾道ミサイル「東風26」や、国産最新鋭ステルス戦闘機「殲20」の配備など、武器や装備品の近代化を進めるとしている。

 台湾については「台湾を中国から分裂させる者がいるなら、中国軍は一切の代償を惜しまず、国家統一を守る」と訴え、台湾統一に向け武力行使も辞さない強硬姿勢を鮮明にした。米国は台湾の自由と民主主義を守るため、安全保障面での関与をさらに強化すべきだ。

 さらに白書は「南シナ海の諸島と釣魚島(沖縄県・尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土だ」と明記。南シナ海の軍事拠点化や尖閣周辺海域への中国公船派遣を「法に基づく国家主権の行使」だと正当化した。

 こうした見解は到底受け入れられない。尖閣に関して、中国が領有権を主張するようになったのは1970年代以降のことで、日本は1895年に領土に編入している。

 南シナ海についても、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年7月、中国の主張を否定する判断を下している。平気で国際秩序を破壊する中国の動きに警戒を強める必要がある。

 白書は、上陸作戦を担当する海軍陸戦隊(海兵隊)が東海、南海、北海の3大艦隊と同等に格上げされたことを初めて明記した。尖閣や台湾などを念頭に置いたものだろう。日本をはじめとする周辺諸国は米国との連携で抑止力向上に努めなければならない。

 白書は「国家主権、安全保障、開発の利害関係を守るために必要な条件と、中国の国防支出の間には依然として大きなギャップがある」としている。必要条件を満たすために避けて通れないのが国防支出の増大だという本音が透けて見える。

日米同盟の一層の深化を

 白書は、軍トップの習近平中央軍事委員会主席(国家主席)の指導で「戦争ができ、戦争に勝てる軍隊」を作ると強調し、米国の覇権に挑戦する意図を鮮明にした。

 日本は地域の安定に貢献する必要がある。日米安保体制は、日本だけでなく地域の平和を守るための公共財だ。中国の脅威に対処するため、日本の役割拡大を含め、日米同盟を一層深化させていくべきだ。