サンマ漁獲枠、一層の規制強化へ理解得よ
北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次会合で、サンマの乱獲に歯止めをかけるため、2020年に北太平洋全体で日本、中国、台湾など加盟8カ国・地域に約55万トンの漁獲枠を導入することで合意した。サンマ漁に対する国際的な規制導入は初めてとなる。
昨年実績を大きく上回る
日本の漁獲量は最盛期の1958年に約58万トンだったが、2015年以降は10万トン前後と6分の1の水準に低迷。サンマは夏から秋にかけ、日本の東側の公海から排他的経済水域(EEZ)に回遊してくるが、中国や台湾がEEZ手前の公海で大量に「先取り」していることが一因とみられている。
中国、台湾では、健康志向の高まりなどでサンマの需要が急速に伸びているという。ただ、水産資源は有限であり、乱獲は許されない。
NPFCは、サンマやサバ類など北太平洋の水産資源を管理・保護するための国際機関。15年に発足し、日本、中国、台湾、韓国、ロシア、カナダ、米国、バヌアツの8カ国・地域が参加している。日本は17年以降、2度にわたってサンマの漁獲規制案を示したが、中国の反対で合意には至らなかった。
中国は「サンマの資源量を示す明確なデータがない」などと主張していた。しかし今年4月のNPFCの科学委員会で、北太平洋のサンマ資源量について全加盟国・地域が低水準にあるとの見解で初めて一致し、中国が反対を続けることは難しくなった。
資源管理のため、規制を導入したことの意味は大きい。とはいえ、漁獲枠55万トンは18年の漁獲実績(約44万トン)を大きく上回る数量で、資源回復につながるかは疑問が残る。
日本は当初、45万トン前後の上限を設ける案を提起していたが、中国との合意を優先して漁獲枠を上積みした経緯がある。水産庁の神谷崇資源管理部長は「不満が残るが合意しないと物事が進まない。一つの経過点だ」と評価した。中国などに水産資源管理の重要性をさらに訴えていかなければならない。
全体の枠のうち公海の漁獲枠(33万トン)の国・地域への配分は来年の夏に協議するため、それまでにできるだけ多くのサンマを取ろうとする動きが出てくるのではないかとも懸念されている。
会合では、全加盟国・地域がそれぞれの公海での漁獲量をNPFC事務局に毎週報告することで合意したが、これで規制が有効に機能するかは不透明だ。
日本は規制の趣旨に沿った対応を促す必要がある。資源回復のためには、一層の規制強化に向け、全加盟国・地域の理解を得ることも欠かせない。
専門家の多くは、サンマの不漁の原因は乱獲だけでなく、地球温暖化に伴う水温の上昇で日本近海への回遊が減ったためとも指摘する。温暖化防止策も含め、息の長い取り組みが求められる。
持続可能な資源維持を
サンマのほか、ウナギやマグロなども不漁が深刻になっている。資源管理を強化し、持続可能な水産資源の水準維持に努めるべきだ。