人口減少、結婚支援の取り組み強化を
総務省が今月公表した住民基本台帳に基づく2019年1月1日現在の日本人の人口は、前年同期比43万3239人(0・35%)減の1億2477万6364人で、10年連続の減少となった。
人口の減少数、率ともに過去最大を更新。都道府県別で人口が増えたのは、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の4都県と沖縄のみで、東京一極集中が改めて浮き彫りとなった。
「出生数ゼロ」の自治体も
都市圏別では、名古屋圏(岐阜、愛知、三重の3県)、関西圏(京都、大阪、兵庫、奈良の4府県)の減少数が拡大し、東京圏の増加数を上回った。全1747市区町村中1499自治体で人口が減少して「出生数ゼロ」の自治体も四つあった。
特に深刻なのは、働き手となる15~64歳の生産年齢人口の減少だ。同人口は7423万887人で、全年齢層に占める割合は6割を切っている。「団塊の世代」が75歳以上となる25年以降には大きく減少し、労働力不足が懸念されている。
安倍政権は「希望出生率1・8」を目標に掲げているが、1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す「合計特殊出生率」は、昨年が1・42で達成には程遠い。昨年の出生数は91万8000人で過去最少を記録するなど、少子化に歯止めがかかっていないのが現状だ。
こうした中、一極集中の流れを変え、子育てをしやすい地方で若者の定住を増やすことは、少子化対策にも有効とされている。このため、安倍政権は「地方創生」を看板政策に掲げているが、効果が十分に表れているとは言えない。
政府は地方創生に関する15年度からの5カ年戦略で、20年までに東京圏と地方の転出入を均衡させることを目指した。しかし、18年時点で東京圏の転入超過は約14万人に上り、目標達成を断念。中央省庁の地方移転も、大規模移転は文化庁のみにとどまる。
安倍晋三首相は日本が直面する少子高齢化を「国難」と位置付けるが、先の参院選でも地方創生に関する論戦は低調だったと言わざるを得ない。担い手不足で行政機能の維持が困難になる自治体が出ることも予想される中、いかに地域を活性化させていくかが問われている。
未婚化や晩婚化の流れを食い止めることも、少子化対策を進める上で重要だ。50歳までに一度も結婚したことのない「生涯未婚率」は、1970年に男性1・7%、女性3・3%だったのが、2015年には男性23・4%、女性14・1%にまで上昇している。
19年版「少子化社会対策白書」によれば、結婚願望のある未婚の男女の約6割は、相手を探すための婚活をしていない。自治体や企業には、出会いの場を提供し、結婚まできめ細かく相談に乗るなど、未婚の人たちを後押しするような結婚支援の取り組み強化が求められる。
育児の素晴らしさ伝えよ
少子化や未婚化の背景には、戦後の日本社会に個人主義が蔓延(まんえん)し、伝統的家族観が軽んじられてきたことがある。若者に結婚や育児の素晴らしさを伝えていくことも重要だ。