インド太平洋戦略、日米は地域安定に貢献せよ


 シャナハン米国防長官代行はシンガポールで開かれた「アジア安全保障会議」で、新たなインド太平洋戦略を発表した。

 他国の主権を無視した中国の威圧的行動に対して「ネットワーク化された安全保障構造」の構築を目指すとしている。日本は米国との同盟関係を強化し、地域の安定に貢献すべきだ。

中国への対抗姿勢鮮明に

 新戦略は南シナ海の軍事拠点化や知的財産窃取などを例示して「中国は軍備近代化や略奪的な経済的手法を通じ、自らの利益に沿う形に地域秩序を変革しようとしている」と批判。「米国は自由で開かれたインド太平洋に永続的に関与する」と述べ、中国への対抗姿勢を鮮明にした。

 中国は南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島や西沙(英語名パラセル)諸島で複数の人工島を形成し、軍事拠点化を加速させている。3000㍍級の滑走路を備える南沙諸島のファイアリクロス(中国名・永暑)礁を拠点に軍事作戦を展開した場合、領有権を争うフィリピンやベトナム、マレーシアの大半を作戦の範囲内に置くことができるという。

 このままでは、有事に米軍の接近を防ぐ中国の軍事戦略「接近阻止・領域拒否(A2AD)」の能力が向上し、航行の自由が脅かされる懸念が強まる。米国がインド太平洋地域に対する関与強化を表明したことは時宜にかなっている。

 シャナハン氏は、同盟国などとの連携強化や、アジア諸国間の協力促進で国際ルールに基づく秩序を擁護する安保ネットワークの構築を掲げた。日本は米国やオーストラリア、インドなどと共に中国の覇権主義的な動きを抑え込む必要がある。

 会議では、中国の魏鳳和国務委員兼国防相が人工島について「中国の主権下にある領土であり、自国の領土に自衛目的の軍事施設を建設することは軍事化に当たらない」と反論した。だがオランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年7月、中国が南シナ海で主張する境界線「九段線」には国際法上の根拠がないとの判決を下している。中国の行動は地域の秩序と安定を損なうもので決して容認できない。

 このほか、中国に関連して憂慮されるのは台湾問題だ。魏氏は「他国が台湾の分離を図るのであれば、全ての犠牲を払って戦うという選択肢しかない」と演説し、台湾海峡に海軍艦艇を派遣するなど台湾支援の姿勢を強める米国を牽制(けんせい)した。中台統一に向けた中国の動きに警戒を強めなければならない。

 中国の習近平国家主席は今年初め、台湾政策について「武力使用を放棄することは承諾できない。一切の必要な措置を取る選択肢は留保する」と明言。「一国二制度」による中台統一を目指すとした。

台湾の民意踏みにじるな

 これに対し、台湾の蔡英文総統は「われわれは一国二制度を絶対に受け入れない」として断固拒否する意向を表明。台湾の世論調査でも、反対する人が4分の3以上に達した。台湾は日本や米国などと自由や民主主義の価値観を共有している。共産党一党独裁体制の中国が台湾の民意を踏みにじり、強引に統一を進めることは許されない。