北方領土、露の軍事拠点化は許されない


 日露両政府は東京都内で外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開き、北朝鮮の非核化に向け連携を確認するとともに防衛交流強化で一致した。

 だが、日本固有の領土である北方領土が返還されない限り、ロシアとの信頼関係の構築は困難だ。

択捉・国後で演習実施

 2プラス2は昨年7月以来。河野太郎外相と岩屋毅防衛相、ロシア側はラブロフ外相とショイグ国防相が出席した。

 ロシア軍は3月、北方領土の択捉島と国後島で軍事演習を実施。また、ロシア国防省機関紙「赤い星」が先月、昨年秋に択捉島で最新鋭の地対艦ミサイルシステム「バル」の発射演習が行われたと伝えるなど、ロシアは北方領土の軍事拠点化を進めている。

 北方領土不法占拠の既成事実化は決して許されない。2プラス2で日本側が「4島の軍備強化は法的立場から受け入れられない」と抗議したのは当然だ。

 これに対し、ラブロフ氏は「ロシアの領土における活動だ」と反論。ラブロフ氏はこれまでも、北方領土について「第2次世界大戦の遺産」と主張してきた。

 しかしロシアの前身であるソ連は、第2次大戦末期に当時有効だった日ソ中立条約を破って対日参戦し、北方領土を占領した。このような国際法違反を受け入れることはできない。

 2プラス2では、今月中旬にロシア極東ウラジオストクの近海で海上自衛隊とロシア海軍の捜索・救難共同訓練を実施することで一致した。こうした取り組みは重要だが、ロシア側が北方領土問題で自国の非を認め、返還に応じない限り、真の信頼醸成は難しいだろう。

 懸念されるのは、日本政府が最近、北方領土問題をめぐって「不法占拠」「固有の領土」などの表現を控えていることだ。領土交渉を進展させるため、ロシアへの配慮を示しているのだろうが、日本の主張が後退したと受け取られるのではないか。

 今月29日には安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との首脳会談が大阪で行われる方向だが、首相はロシアの不法占拠を容認せず、4島返還を求める姿勢を明示すべきだ。

 一方、2プラス2では北朝鮮の非核化に向けて連携することで一致した。非核化実現には、北朝鮮の後ろ盾であるロシアの協力が欠かせない。

 ただロシアは北朝鮮に対する経済制裁の緩和に理解を示しており、非核化実現までの制裁維持を主張する日本や米国とは立場が異なる。だが、圧力を緩めれば核問題は解決できまい。

 ロシアは日本の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」導入について「米国のミサイル防衛システムの一部が日本の領土内に配備されるのは、ロシアの安全保障にとって危険だ」と懸念を示した。

 日米同盟に揺さぶりをかける狙いもあるのだろう。岩屋防衛相は「純粋に防御的なものだ」と説明した。

日本は成果を焦るな

 ロシアはしたたかであり、日本は対露外交で成果を焦るべきではない。北方領土問題に関しても、粘り強く返還を訴え続ける必要がある。