台湾与党大敗、中国の圧力強化に警戒を
台湾の統一地方選で与党・民進党が大敗した。「一つの中国」原則を受け入れない民進党の敗北を機に、中国の習近平政権が民進党の蔡英文政権への攻勢を強めることが予想される。
蔡総統が主席辞任を表明
民進党は22県市の首長選で首長ポストを13から6に半減させた。民進党地盤の高雄市長選では同党新人の陳其邁氏が最大野党の国民党新人の韓国瑜氏に敗れ、台中でも民進党現職の林佳龍氏が国民党新人の盧秀燕氏に敗北した。
選挙結果を受け、蔡総統は民進党主席の辞任を表明。蔡氏の党内での求心力低下は必至で、2020年の次期総統選への再選出馬にも黄信号がともった。
16年5月に発足した蔡政権は、残業規制の強化や公務員の年金改革などを推進したが、改革の進め方をめぐって産業界からも労働者層からも反発を招いたことで支持率が低迷。今回の大敗につながった。
対中政策では、中国が求める「一つの中国」原則の受け入れを拒否する一方、中台関係の現状維持路線を掲げ、中国を刺激する言動を極力抑えてきた。これに対し、中国は蔡政権発足以降、中南米を中心に5カ国と国交を樹立し、台湾からの引きはがしに成功。欧州で唯一台湾と外交関係を持つバチカン(ローマ法王庁)とも今年9月に司教任命問題で暫定合意した。
こうした中国の攻勢に有効な手立てを打てない蔡政権に対し、民進党支持者の間にも失望感が広がったことも敗因の一つとなったと言えよう。習政権は今後も台湾と外交関係を持つ国々に断交を仕掛ける構えだ。次期総統選で民進党を下野させて国民党による中国寄りの政権を誕生させ、中台統一への布石とする狙いがあろう。
中国は台湾を安全保障上譲歩できない「核心的利益」と位置付けており、習氏は中台統一に強い意欲を示している。3月に開かれた全国人民代表大会(全人代)では、台湾問題について「一つの中国」原則を堅持するとした上で「平和統一プロセスを推進しなければならない」と強調した。
台湾では民主主義が定着しており、共産党一党独裁体制の中国とは異なる。習氏は一国二制度によって平和統一する方針だが、1997年に英国から中国に返還された香港では、一国二制度は形骸化し、中国の締め付けが強まりつつある。蔡政権に対する圧力強化への警戒が求められる。
トランプ米政権は今年3月、米国と台湾の高官往来を法的に裏付ける台湾旅行法を成立させた。また9月には、戦闘機の部品売却を決定するなど台湾との関係強化に動いている。台湾と断交し、中国と国交を結んだドミニカ共和国、エルサルバドル、パナマの3カ国に駐在する大使や臨時代理大使の召還にも踏み切った。
日米台の連携強化を
仮に中台統一が実現すれば、日本にとっては安保上の重大な脅威となる。
中国の覇権拡大に歯止めを掛けるためにも、自由や民主主義などの価値観を共有する日本、米国、台湾は一層の連携強化に努める必要がある。