中国陸戦隊、尖閣占拠の可能性に警戒を


 米国防総省は中国の軍事・安全保障の動向を分析した年次報告書を公表した。

 この中で、中国海軍が2020年までに上陸作戦などを担当する陸戦隊(海兵隊)を3万人以上の規模に拡大させるとの見通しを示した。

兵力増大の見通し示す米

 報告書は、陸戦隊の拡大を「中国海軍に関する17年の最も重要な変化の一つ」と指摘。中国は台湾への軍事行動や、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の占拠などを視野に兵力を増大させている可能性がある。中国は建国後から米海兵隊を強く意識し、同様の部隊整備を目指してきたとされている。

 中国は国際ルールを無視して南シナ海の軍事拠点化を進めている。尖閣をめぐっても一方的な現状変更の動きを強める恐れがあり、警戒を要する。

 また台湾をめぐっては、対岸の中国・福建省泉州で7月末から今月にかけ、ロシア軍などとの軍事交流を名目にした上陸訓練が実施され、陸戦隊が参加。中国の習近平国家主席は中台統一に強い意欲を示しており、軍事力増強は「一つの中国」原則を認めない台湾の蔡英文政権に圧力をかける狙いもあろう。

 報告書はまた、中国が長距離爆撃機に搭載する核能力を追求していることにも言及した。大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と戦略爆撃機で構成される核運搬手段の「3本柱」が中国で初めて確立されたと指摘。「中国空軍はさまざまな能力において米空軍との差を縮めており、米国が長年保ってきた技術的優位を脅かしつつある」と警戒感をあらわにした。

 さらに、中国空軍が過去3年間で沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」を越え、戦略爆撃機を西太平洋にまで飛行させていると分析。将来は日本の周囲やフィリピン海全域にまで活動領域を広げ、米領グアムなどの米軍基地に対する攻撃能力を誇示する可能性があると警告した。中国は第1列島線を越え、伊豆諸島からグアムに至る「第2列島線」まで制空・制海権を確保することを目指しているとされる。

 習氏は国家主席就任以来「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」という発言を繰り返している。日米などは、こうした中国の覇権主義に対抗しなければならない。

 報告書は、17年の中国の軍事関連費が公表されている国防予算を上回る1900億ドル(約21兆円)以上と推定。28年には2400億ドル(約26兆6000億円)以上に達するとし、軍事力拡大に警戒感を示した。

 米国の19会計年度(18年10月~19年9月)の国防予算は、この9年間で最大規模となる7160億ドル(約79兆円)となる。規模を見れば米国優位は明確であるが、中国が猛追し、太平洋を挟む2大国のにらみ合いが生まれている。

日本は防衛力整備急げ

 日本では離島奪還作戦の能力強化のため、今年3月に陸上自衛隊の水陸両用部隊「水陸機動団」が新設された。

 日本は中国を念頭に、米国との同盟強化と共に防衛力整備を急ぐ必要がある。