中国国産空母、周辺諸国脅かす運用に警戒を
中国初の国産空母が、遼寧省大連の造船施設を出て周辺海域で試験航行を始めた。動力設備の信頼性、安定性の検証などが目的とされる。習近平政権の掲げる「海洋強国」を誇示する狙いがある。
就役が19年に前倒しか
初の国産空母は2013年11月から建造に着手し、17年4月に進水した。早ければ年内にも海軍へ引き渡し、20年と想定されていた就役が19年に早まるとみられている。中国は西太平洋やインド洋で空母を展開するため、戦力向上を急いでいる。
この空母は全長315㍍、幅は最大75㍍で最大速度は31ノット。動力は通常型で、スキージャンプ型と呼ばれるそり上がった船首甲板から艦載機が発艦する。中国の空母としては、旧ソ連製の「ワリャーグ」を改修して12年に就役した「遼寧」に続く2隻目となる。
中国にとって国産空母の保有は1980年代からの悲願とされてきた。習主席は先月、49年の建国以来最大規模とされる閲兵式を南シナ海の洋上で実施し、海軍力についても世界一流を目指すと宣言。中国は空母打撃群を常時運用するため、5~6隻の空母保有を目指しているという。現在3隻目を上海で建造中で、原子力空母の保有も視野に入れている。
中国は南シナ海の軍事拠点化を進め、インド洋でもパキスタンやスリランカなどの沿岸国で道路や港湾などの整備を行って海洋進出の拠点としている。保有空母の増加で、こうした覇権主義的な動きを強めることが懸念される。
南シナ海で中国が空母の運用を常態化させる恐れもある。そうなれば、米国や周辺諸国との摩擦が強まるのは必至だ。東アジアの軍事バランスを変えかねず、周辺国にとっての脅威は増大するだろう。
習氏は「一つの中国」原則を認めない台湾の蔡英文政権を牽制(けんせい)する発言を繰り返し、中台統一に強い意欲を示している。空母の建造が進めば、台湾への軍事的圧力も高まるに違いない。
遼寧は今年3月下旬から約1カ月間、南シナ海などを航行。パイロットの技量向上を図ったもようだ。4月には、沖縄本島と宮古島の間の公海上を通過して東シナ海に入った。空母の運用能力で米国との開きは大きいとはいえ、警戒を要する。
中国との間に沖縄県・尖閣諸島問題を抱える日本への圧力も強まっていると言える。政府が閣議決定した海洋政策の指針「海洋基本計画」では、中国の国名明記は避けつつ、外国公船による領海侵入の活発化や、外国漁船の違法操業など日本を取り巻く環境の変化を指摘。シーレーン(海上交通路)の安定利用に関しても、中国による南シナ海などでの権益拡大の動きを念頭に「一方的な現状変更やその既成事実化の試み」によりリスクが生じていると強調した。
日米の相互運用性高めよ
海上自衛隊と米海軍は3月、南シナ海で共同訓練を行った。米側は原子力空母「カール・ビンソン」、海自は「空母型」のヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」が参加した。海自と米海軍の相互運用性を高め、中国海軍を牽制することが求められる。