習体制強化、国内外の安定を損なうな
中国共産党は最高指導部である政治局常務委員らを選出し、習近平総書記(国家主席)の2期目の指導部が発足した。
党規約に名前を記す
新たな党規約には「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」が盛り込まれた。これまで党の最高規則である党規約に個人名が記された歴代指導者は毛沢東と鄧小平のみだ。
党内に習氏の地位を脅かすライバルは姿を消し、習体制の行き過ぎを止めるブレーキ役も見当たらない。習氏に対しては「領袖(りょうしゅう)」と呼ぶ動きが広がっている。「領袖」は、かつて毛に使われた呼称だ。
胡錦濤前国家主席と習氏は、前任者が2期目に入る段階で政治局常務委員になり、後継者と位置付けられた。だが今回、政治局常務委員には習氏の後継候補者と目される人物は選ばれなかった。
習氏が自らの権威を高め、毛に対して行われたような個人崇拝のムードが漂い始める中、「習氏は終身体制を狙っている」との見方も出ている。習氏の権力基盤強化によって、国内では人権・民主活動家への締め付けが強まり、対外的には強引な海洋進出など「強国路線」を一層推進することが懸念される。
沖縄県・尖閣諸島周辺では、中国公船が領海侵入を繰り返している。習氏は共産党大会で、総書記就任以来の5年間の成果の一つとして南シナ海の人工島造成や軍事拠点化を挙げた。南シナ海をめぐる中国の主権主張は、昨年7月のオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決で否定されている。しかし、権力基盤を固めた習氏が他国の主権侵害や国際法違反をやめることはなさそうだ。
中国の覇権主義的な動きに備えるためにも、日本は米国をはじめ、インドやオーストラリア、東南アジア諸国連合(ASEAN)などと連携し、共同演習実施など防衛協力の強化を進める必要がある。航行の自由や法の支配などの価値観をアジア太平洋やインド洋沿岸の地域に浸透させることも求められよう。
注意すべきは、習政権が中台統一に向け強硬路線に打って出る恐れがあることだ。習氏は党大会で台湾の蔡英文政権に、中国本土と台湾が同じ国に属するとの「一つの中国」原則を確認したとされる92年合意を受け入れるよう改めて迫った。
習氏が建国の父である毛を超えたと認められるには、中台統一を実現する以外にない。習政権が核・ミサイル開発を進める北朝鮮への制裁を強化する代わりに、台湾への関与を弱めるよう米国に求めるのではないかとの見方も出ている。
蔡政権は中台関係の「現状維持」を掲げている。これを力で変えようとすることは許されない。香港でも高度な自治を保障した一国二制度が形骸化しつつあるが、市民の間では独立を視野に入れる「本土派」が台頭するなど反中感情がくすぶっている。強権的な手法は安定を損なうだけだ。
日米は強く牽制せよ
来月には、トランプ米大統領が日本を訪れる。安倍晋三首相はトランプ氏と共に日米同盟強化を打ち出し、習政権を強く牽制(けんせい)すべきだ。