カタルーニャ、「独立宣言」で混乱招くな
スペインの北東部に位置するカタルーニャ自治州議会は、同州が「独立した共和国」だと明記した宣言を賛成多数で可決した。これに対し、スペインのラホイ首相は現行憲法下で初の自治権停止を発動し、州政府の独立を阻止するため強い姿勢を打ち出した。
中央政府が州首相ら罷免
カタルーニャはスペインとは異なる独自の言語や文化を持つ歴史的な地域だ。フランコ独裁政権時代(1939~75年)には地域の文化や言語は弾圧されたが、78年に制定された憲法では自治州に広範な自治権が与えられた。
カタルーニャはスペインの国内総生産(GDP)の約2割を生み出す裕福な地域でもある。もともと独立の機運が高く、近年は「貧しい地域に富が奪われている」という不満が強まっていた。
独立宣言は、今月初めの住民投票で独立が支持されたことを踏まえて行われた。住民投票では独立賛成票が90%に上ったが、投票を妨害するため中央政府が派遣した警官隊と住民の衝突で900人弱が負傷する事態を招いた。
住民投票では独立反対派の多くが、賛成派の手法が強引だと批判して棄権したため、投票率は43%にとどまった。投票結果が世論を正確に反映しているとは言えまい。カタルーニャが独立を目指すことは地域の混乱を招きかねない。
独立宣言について、欧州連合(EU)のトゥスク大統領はツイッターで「EUにとって『独立宣言』は意味がない」と発信し、国家として認めない立場を提示。米国務省報道官も「カタルーニャはスペインの固有の領土だ」と、独立を支持しない考えを表明した。カタルーニャの独立賛成派は、こうした国際社会の声を真摯に受け止める必要があろう。
スペインの憲法155条は、地方自治体が国益に深刻な被害を与えた場合、中央政府が上院の同意を条件に必要な手段を取ることができると定めている。中央政府はこの条項に基づき、自治州政府のプチデモン州首相らを罷免し、州議会を解散した。こうした強硬姿勢が住民の反発を招き、独立志向を強めないかも懸念される。
スペインの自治権の範囲は州によって異なる。北部のバスク州とナバーラ州は一定の分担金を国に納める代わりに税の徴収権が与えられている。一方、カタルーニャなど15の州は国からの交付金が財源となっている。プチデモン氏の罷免後は、サエンスデサンタマリア副首相が州首相の務めを果たす予定だが、将来的には税の徴収権の移譲など自治権拡大も検討すべきではないか。
地方の不満に耳を傾けよ
スペインではかつて、バスク地方でも分離独立を求める過激組織「バスク祖国と自由」が武装闘争を繰り広げ、2010年までに政府要人を含め800人以上の犠牲者を出した。
過激な独立運動は決して容認できない。しかし、地方の不満に耳を傾け、適切に対応していく努力は求められよう。中央政府はこのことを肝に銘じる必要がある。